彰くんと私は、同じクラス。
 瑛斗くんは隣のクラス。
 
 たまに休み時間に、瑛斗くんがこっちのクラスに来ると、当然のように、彰くんが立ち上がる。
 
 大抵、瑛斗くんの用事は彰くん、なんだけれど。
 今日は違った。

 うちのクラスで、というか、うちの学年で、一番可愛いと言われてる、美香(みか)を、瑛斗くんが呼んだ。

 瑛斗くんを見つけて立ち上がろうとしていた彰くんは、すぐ、すとん、と座りなおした。

 美香が机の横に掛けてた紙袋を手に、瑛斗くんの元に向かう。

 クラスがざわつく。
 ただでさえ、目立つ二人。

 瑛斗くんは、女子に興味がなさそうな硬派なイメージで通ってるから、余計に、皆が興味津々。

 彰くんも、気にしてる。
 あ。瑛斗くんと、美香ちゃんが、消えてった。
 
 ……嘘でしょ?
 瑛斗くん、どうしちゃったの???

 心の中で、多分私が一番狼狽えてる。
 彰くんはといえば、特別関係なさそうに、友達とまた話し出してるけど。内心どうなんだろう。

「なになに、美香って、瑛斗くん、おとしたのかな?」
「あの紙袋はお弁当とか?? 帰ってきたら美香に聞くしかないよね」

 私の横で、いつも仲良しの親友たちがワクワクした感じで話してる。

 そんなはず、ないんだけど。
 と、言いたいけど、さすがに親友二人にも、言えない。
 
 何でなのかな、瑛斗くん、どうしちゃったの。
 まさか、叶わない男同士の想いを振り切るために女子に……?
 って、彰くんの態度見てて、叶わないとか、思わないよね。

 彰くん、気にしてないように見えるけど。
 私の方が気になるよー!

 どうなんだろう。
 彰くんは、ほんとに気になってないのかな。

 この二人って、お互い告白もせずに、ただ普通にナチュラルにイチャついてるだけな気がするから、もしかしたら、私からはどう見てもカップルだけど、もしかしたら、二人にとっては、実はまだ自覚してなかったり……?

 悶々としてて、気になって、美香に話を聞こうと思ってたのに、その日のお昼休みは本鈴ギリギリで美香が帰って来たので、全然聞き出せなかった。


 部活が始まる。美香とは話せないまま。
 こんな日に限って、瑛斗くんは、日直で少し遅れてきて、いつも最初にある、皆との雑談時間の終了ギリギリに入ってきた。

「あ、噂の瑛斗だ」
「……なにが?」

 多分もう届いてるのか、噂という言葉に、瑛斗くんがちょっとピリッとする。

「だって、美香ちゃんと昼消えてったって、すごい噂になってたぞ?」
「付き合ってんの?」

 皆、ナイス。
 あ、もう先輩に呼ばれちゃう。瑛斗くん、早く……。

「……付き合ってねーよ」
「じやあ何で二人で消えたんだよ?」

 その瞬間。

「一年、あつまれー!」

 ――――……集合がかかってしまった。

 皆、話中断で、先輩のもとに集合。
 もちろん私たちマネージャーも。

 ああ、もう。あと一分、欲しかった!

 やっぱり、彰くんは、何も言わないけど、
 でもなんか、元気ない、気がする。

 瑛斗くんと、目を合わせてない。


 ……ああ、ヤバい。
 可愛い、彰くん。

 こんな可愛い彰くんを、ほっとく瑛斗くんじゃないと、思うんだけど。
 なんでか、瑛斗くんも、彰くんの隣に行かない。


 えー、何で……?
 もうだめだ。
 気になりすぎて。


 先輩の話にも、その後のマネージャー業にも、全然身が入らない。