バイトから帰ってきた玲望は汗だくであった。

 瑞希が時間を合わせて部屋を訪ねると、ちょうど帰ってきたところで「ちょっと先に風呂、入る」と、さっさとシャワーを浴びに行ってしまったのだ。

「あー、涼し」

 シャワーでさっぱりしてきて、どっかり座ってクーラーの真下に陣取った玲望。

 夏の暑さのほかに、風呂で火照ったのもあるだろう。

「おい、そんな冷やすと風邪引くぞ」

 いくら今は暑くても、クーラーの真下など。

 瑞希は用意してきた『夕食』をちゃぶ台に並べながら、苦言を呈した。

 それに目にも悪い。

 部屋着のハーフパンツに薄いTシャツだけの、湯上り姿など。

 これは瑞樹のただのよこしまな思考であるが。

「いいだろ、冷めるまでだって」

 玲望はクーラーの真下に座ったままで、ちょっと不満そうな顔になって瑞希を見上げた。

 でも瑞希はきっぱり言い放つ。

「そんなとこだとソッコーで冷え切るだろ」

 なにしろ玲望の家はボロアパート。

 ついているクーラーもなかなか古い。

 流石にアパートが建てられてから何回か取り換えられているはずだが、どう見ても新品とはほど遠いのである。

 つまり性能もあまり良くないし、温度設定も極端なのだ。

 温度を下げると冷え過ぎることも多々。

 玲望はクーラーに関しては、使うのを惜しまなかった。

 普段は電気代に対して非常に厳しいのに。

 その理由は「熱中症になったほうが医療費がかかるから」だったのだが。

 結局合理的なのであった。