「ああ。小学校でまたバザー、やる。あとドッジ大会とか」

 よって、瑞希もなんでもない返事をした。

 合宿の予定なんて、普通過ぎることを。

 夜道はこつこつと小さく靴の音だけがする。

 それから小さく交わす、ごく普通の会話。

 両方が心地良かった。

 夏のむわっとした空気も気にならない。

 夜になり、多少気温が下がったのもあるだろうが、そんな単純な理由ではないだろう。

 これもきっと同じこと。

「色々あるんだな。今度は菓子はいいのか」

「ああ。持ち歩くのがちょっと心配だからな、向こうで作るんだ」

 夜はどこまでも続いている気がした。

 そんなはずはないけれど。

 玲望のアパートに着けば、おしまいだ。

 そのまま「またな」となるはずだ。

 でもそれまでの時間は、確かにどこまでも続いているのだ。

 終わりが見えないほど、どこまでも。