別に、高校生にもなって夜道が怖いということはない。

 まだ深夜というほどではないのだし。

 でも二人でいられるのは安心だった。

 確かな安心。

 ファミレスは勿論、大通り沿いにあったので、まだ街灯が煌々とついていたし、人通りも多少あった。

 でも少し細い道へ入って、住宅地に入る頃にはそれも少なくなってくる。

 ちょっとためらった。

 嫌がられるだろうか。

 恋人同士とはいえ、あまり周囲に公言はしていないのだ。

「外でやめろよ」と言われるかもしれない。

 だがせっかくの機会である。

 二人きりの帰り道。

 人通りもほぼない。

 誰かに見られる可能性は極めて低いだろう。

 思い切って、瑞希は手を伸ばした。

 玲望の手に触れる。

 玲望が、ちらっとこちらを見た。

 瑞希はなにも言わなかった。

 ただ、視線だけを合わせる。

「いいか?」という気持ちが伝わるように。

 玲望もなにも言わなかった。

 そのままなにもなかったように歩いていくし、視線を逸らして前を見た。

 それだけでじゅうぶんだった。

 瑞希はほっとする。

 拒否されなかっただけでない。

 玲望のほうも確かに受け入れてくれたのだから。