「じゃ、俺は戻る。瑞希も頑張れよ」

 玲望は満足したようで、ふいっと行ってしまった。

 またブース内に入ってくれるのだろう。

「おう。玲望もな」

 そんな玲望の後ろ姿を、瑞希は数秒、見てしまった。

 独り暮らしの玲望。

 ご飯を食べるのだって独りなのだ。

 たまに胸に迫るそれが、今、襲ってきてしまった。

 別に玲望本人は気にしたり、境遇を恨んだりしていないだろう。

 けれど寂しく思うことがないはずはない。

 そう、さっきの女の子に『妹を思い出した』なんて優しくしてしまうくらいには。

 肉親にはなれない。

 玲望の愛する弟、妹にもなれない。

 でも、自分だってできることはある。

 それはまだ、事象としてしかないし、玲望の気持ちだってわからないけれど。

 確かに可能性はあるのである。

 玲望といつか、家族になる。

 そういう可能性。

 ちょっともどかしい。

 高校生の身としては、まだ叶えるのが難しいということが。