「いいの!? おにいちゃん、ありがとう!」

 女の子はもう一度、明るい声で喜んでくれた。

 玲望から包みを受け取って、大事そうに両手で持った。

 嬉しそうな顔をしてくれた女の子。

 それを見つめる玲望はとても優しい顔をしていて。

 玲望のこういう顔……幼い子相手にこんな顔。

 初めて見た、と瑞希はちょっとぽぅっとしてしまった。

「ありがとうございましたー」

 みんなでお礼を言って、今度こそ親子連れは去っていった。

「玲望、ありがとな」

 瑞希は玲望を振り返った。

 玲望はまださっきと同じ顔をしていた。

 玲望は今日、部員でもないのに手伝いに来てくれていたのだ。

 貴重な夏休みの一日だというのに。

「俺が教えて作ったんだから、気になって」なんて言っていたけれど。

「いいや」

 玲望はポケットに財布をしまっている。

 それを見て、瑞希はやっと知った。

 玲望は自分で金を出して、さっきのクッキーを求めてくれたのだ。

「なんか、妹を思い出した」

 ぽつりと言った玲望。

 弟、妹想いなのに、今は離れて暮らしている玲望。

 その言葉は瑞希の心をちょっとだけ痛ませる。

 本当は寂しいのだろう。

 家族と一緒に暮らせないことが。

 家族が傍にいないことが。