「ねぇ、お父さん! さんりんしゃ!」

 通りかかった親子連れ。

 連れられていた小さな女の子がひとつを指差して、明るい声をあげた。

 ちょうどリサイクル品ブースにいた瑞希は顔をほころばせてしまう。

「お? 欲しいのか?」

「うん! このあいだ、公園で乗ってる子がいたの」

 会話の様子を聞く。

 これは売れるかもしれない。

 それに、純粋にこの子のところにこの三輪車が行けばいい、とも思った。

「良かったら乗ってみませんか?」

 瑞希は親子連れに声をかけた。

 女の子は勿論、喜んで三輪車にまたがって、そんな嬉しそうな顔を見せれらればお父さんもかなわないと思ったのだろう。

「これ、ください」と言ってくれた。

「ありがとうございます!」

 瑞希だけでなく、部員もお礼を言ったけれど、ブースに立っていた部員がちょっと困ったような顔をした。

「あ……すみません、包むものがない、ですね……」

 なにしろ、幼児向けとはいえそれなりに大きい。

 用意していた袋には入らない。

 しかしお父さんは気にした様子もなく、がしっと三輪車を掴むと軽々持ち上げた。

「構わないですよ。車で来てますから。さ、一回車に戻って積んでくるぞ」

「うん! お父さん、ありがとう!」

 三輪車を抱えたお父さんに、女の子はくっついて甘えている。

 その様子は微笑ましかった。

「たくさん遊んでくれな」

 瑞希はつい、かがんで女の子の頭を撫でて、女の子は顔をほころばせたのだけど、その横から声がかかった。

「ありがとうございます。良ければこちら、お礼に……」

 すっと女の子の前に差し出されたもの。

 それは小さな袋だった。

 手作りのブースで売っている焼き菓子。

 クッキーが入っている。

 おまけに差し出してきているのは玲望ではないか。

 瑞希はちょっと驚いた。