まずい、いつのまにか手が止まっていたようだ。

 サボっていたも同然である。

 一応、勉強は真面目にしているほうなので『サボり』と思われなかったのは幸いだ。

 瑞希は慌てて、「え、えっと、ここがちょっと……」なんて適当なところを指さした。

「ああ……辞書を引いたらいい。類語なら考えてるより調べちまったほうが早いからな」

 教師は覗き込んで、そう言ってくれた。

 瑞希はほっとする。

 今、考えても仕方ないことだ。

 あとにしよう。

 いや、あとで考えることだって仕方がない。

 そのとき……卒業やその直前になって考えればいいことだ。

 今はとにかく、自分の進路のために勉強することが重要。

 瑞希は内心、ちょっと首を振って思考を切り替えた。

 勉強に戻ってくるように。

 教師が「頑張れよ」と言って、教室を回るのに戻っていって、ほっとした。

 ほっとするだけでなく、アドバイスの通りに電子辞書を取り出した。

 本当はわかっていた問題だけれど、訊いてしまったのだから、一応辞書を見ておかなければ。

 そのまま瑞希はワークに戻っていった。

 そのあとは真面目に夏期講習に取り組んだと言えるだろう。