でも、まったく思わないはずはない、と思う。

 玲望とて一人の男子高校生なのだから。

 聞いたりするつもりはない。

 本人がそれでいいと思っていて、前向きに捉えているのだから。

 だけどたまに瑞希は考えてしまうのだった。

 進路が離れてしまうことについて。

 今は同じ高校に通っていて、クラスも部活も違うけれど、それでも毎日会えている。

 でも大学と専門学校と、分かれたら。

 毎日過ごす場所だって、まったく違うものになる。

 勿論、関係をやめるなんてことは微塵も考えていない。

 考えてはいない、けれど。

 どうしても今より距離ができてしまうということは、不安材料だった。

 玲望のことを信頼しているのだから、自分から離れていくなんて思わないし、恋人同士としては一緒にいてくれると信じている。

 それでもほんのり胸の中にあること。

 将来の不安ともいえるようなことだ。

 それは夏の暑さのように、たまにじりじりと迫ってくるのだった。

「梶浦? わからんところでもあるのか?」

 不意に瑞希の思考は中断された。

 はっとする。

 上を見ると、教師が見下ろしていた。