「玲望は今日、午後までいるの?」

「ああ。バイトも夕方からだから」

 午後は自由参加の時間であった。

 でも玲望はそちらにも出るらしい。

 熱心なことである。

 でも本来、玲望はそれほど必死に勉強をする必要はないのである。

 何故なら進路が違うからだ。

「そっか。じゃ、昼飯、一緒に食おうぜ」

「ああ。瑞希は弁当?」

「今日は買いに行かないとなんだよな」

 話しつつ階段を上がっていく。

 今日は昼も一緒だ。

 そういう楽しみが待っているだけで、今日の夏期講習も頑張れる、なんて単純にも思ってしまった。

「じゃ、な!」

 午前の授業は必須参加なのでクラスごとだ。

 瑞希は自分の教室の前で立ち止まり、ひらっと手を振る。

 玲望も「ああ」なんてそっけない言葉だけであったけれど、応えてくれて自分の教室へと歩いていった。

 数秒だけその後ろ姿を見て、瑞希は教室に入る。

 すぐに友人が声をかけてきた。

「お! 梶浦おはよー! 早いじゃん」

 ここでも言われてしまった。

 瑞希は笑ってしまう。

「早いは余計なんだよ」

 同じことを言う。

 そのまま少し駄弁って、そのうち授業がはじまった。