七月の終わり。

 桜下高校も夏休みに入った。

 ぎらぎら照りつける太陽、もくもくと広がる入道雲、セミの声……。

 そんな情緒ある夏は、現代ではあまり無いけれど。

 なにしろ暑すぎる。

 酷いと気温が40度を上回る日もあるくらい、過酷な季節だ。

 昔はもっと気温が低かったと聞くと、いいなぁと思ってしまうものの過去を羨んでも仕方がない。

 瑞希は熱中症防止の塩飴をころころ口の中で転がしながら、灼熱の道を歩いていた。

 今日は夏期講習の日。

 朝から学校がある日だ。

 夏期講習は一年からあるのだけど、三年生は受験が控えていることも手伝って、特に開催日が多い。

 自由参加の日もあるが、せっかくタダで勉強ができるのだ。

 塾などに通うよりコスパがいい。

 親にも「行きなさい」と考える間もなく言われたし、瑞希も気は進まないにしろ、最初から参加するつもりであった。

 一応、大学進学志望なのだ。

 それならあまり好きでなかろうと勉強をしなければ、その希望だって叶えられない。

 それに楽しみもある。

 夏休み中は気軽に会えない友人にも会えるし、一緒に昼食なんかも食べられるし、それに。

「おっ、オハヨー」

 学校の昇降口に入ったところで、瑞希は知っている人物を目にとめて笑みを浮かべてしまった。

 ちょうど上履きに履き替えているのは玲望ではないか。