「丸ごと持ってくるなんて、お裾分けみたいだな」

 カチャカチャと皿とフォークが触れ合う軽快な音がする。

 瑞希は棚から出した皿をちゃぶ台に置いて並べて、食べる準備を進めていったのだが、そこで玲望がちょっとおかしそうな声で言った。

 なにか飲み物を準備してくれている台所から。

 自覚はあったので瑞希は「うるせ」と言うしかない。

 本当は綺麗にラッピングしようかと思ったのだが、丸ごとのパウンドケーキが入るようなラッピングを知らなかったのだ。

 包む段階になって困って、結局家のタッパーなんて、色気のないものになってしまった。

 一応、贈り物なのだからもっと綺麗に渡したかったのだが。

「でも、……いい匂い」

 玲望は瓶のようなものとグラスを一緒に持って、やってきた。

 その表情はとても穏やかで。

 玲望の心も落ち着いてくれたことを表していた。

「そうだろ、絶対美味いって」

「さっきと言ってることが違うけど」

 おまけに瑞希が言ったことに、くすっと笑ってくれる。

 そうしてから包丁でパウンドケーキを切り分けていった。