かしゃかしゃ、とボゥルと泡立て器の触れ合う軽快な音がした。

 瑞希が卵の白身と砂糖を混ぜ合わせている音だ。

 実習では電動泡立て器を使ったので簡単だったけれど、母親に聞いたところ「うちにはないわねぇ」と言われてしまったので、原始的に泡立て器となってしまった。

 今日は家のキッチンを独占して、瑞希は菓子を作っていた。

 レシピを見ながら黙々と材料を測り、ボゥルに卵を割り入れたりと進めていく。

 レシピはプリントだった。

 本でもタブレット端末でもない。

 これは数日前、玲望が部活の皆にくれたものだ。

 玲望と喧嘩をしてしまった日、それから数日。

 玲望とはひとことも話していなかった。

 元々クラスが違うので、常に一緒というわけではないのだ。

 廊下ですれ違ったりすることは多いけれど。

 それに昼は弁当を食べたり、たまに学食へ行ったりと一緒に過ごしているのに、それもない。

 どうにもすかすかして寂しいことである。