「よし、じゃあ試食してみよう。食べ終わる頃には冷めるだろうから次はラッピングだ」

 本当はもう少し時間をおいてからラッピングしたほうがいいと、玲望は事前に教えてくれたのだけど、「でもすぐ持って帰るんだよな。なら仕方ない」と受け入れてくれた。

 ラッピングも商品にするために必要な過程だからだ。

 本番はもう少し寝かせてから包むことにした。

 一人一種類ずつ配って、試食となった。

「うまい! しっかり焼けててクルミが香ばしい」

「パウンドケーキ、しっとりしてて食感がいいよ」

「マドレーヌはふっくら膨らんだなぁ。基宮先輩、すごいや」

 クッキー、パウンドケーキ、マドレーヌ。

 それぞれ良い評価があちこちで交わされる。

 瑞希はほっとした。

 隣で座っていた玲望も同じように思ってくれたことが感じられた。

 なにしろ玲望が教えてくれたのだ。

 成功して安心しただろう。

「うまいな」

 自分でも口に運びつつ、玲望はぼそっと言った。

 今度のそれは、普段の玲望の様子に近い気がした。

 でもやはりなんだか違う。

 瑞希は内心首をひねる。

 なにか気に入らなかっただろうか……。