「すみません、梶浦部長……私が思いつきで言ったせいで……」

 志摩もあまり良い空気でないのは、感じたのかもしれない。

 ちょっと困ったように言った。

 まずい、気を使わせてしまった。

 瑞希は反省して、笑ってみせる。

「いいや。バリエーションが増えるのはいいことだろ」

 それでこの班はおしまいになった。

 やがて生地がそれぞれ出来上がり、オーブンに入れる段階になった。

 オーブンはそれほど多くないので、順番に使うことになる。

 オーブンで菓子が焼けていくと、それぞれいい香りが漂いはじめた。

 待っている部員たちの様子も明るくなる。

 そして次々と完成となっていった。

 クッキーはチョコチップとクルミ。

 両方、市販の素材を入れただけのものだったが、じゅうぶんに見た目が良かった。

 パウンドケーキはオレンジピールとチョコレート。

 オレンジの爽やかな香りが快い。

 チョコレートはこっくりと濃厚な香りを漂わせていた。

 マドレーヌは一番シンプルだった。

 バニラと抹茶。

 でもバニラエッセンスを入れたためか甘い香りがしっかり香る。

 どれも成功のようだった。