試作は順調に進んでいく。

 瑞希はあちこちのテーブルを回って、進行を確認した。

 そしてわからないところがあれば、玲望を呼んでアドバイスを求める。

 玲望はそのすべてに的確な指導をくれた。

「梶浦部長! これ、本番ではなにかの形にするのはどうでしょう」

 クッキーを作っている班にやってきたとき、部員の一人が提案してきた。

 二年の書記女子・志摩である。

「ああ、型で抜くってことか。それもいいなぁ。かわいい形だったら子供とかも喜びそうだ」

 瑞希がいい返事をしたからか、志摩の顔がぱっと輝いた。

「うちにハートとか猫とかの抜き型があるんです。それを使って良かったら……」

 志摩が続けたときだった。

 うしろからぼそっと声がした。

「型抜きクッキーにするんだったら、生地を調整しないとだよ」

 あれ、と思って瑞希は振り返った。

 そこには声の通り、玲望がいる。

 俺がなにか相談を受けたと見て来てくれたのだろうか、と瑞希は思って嬉しくなった。

 笑みが浮かんだだろう。