「よーし、みんな、準備はいいか」

 ある放課後、瑞希はボラ研部員を家庭科室に招集していた。

 今日はバザーで出す焼き菓子の試作をするのだ。

 バザーは無事に申し込めて、受理された。

 再度会議をして、出すものはリサイクル品と、手作りの焼き菓子に決まった。

 売り物はバザー直前に作るのだが、一度試作してみたほうがいいと思って。

 ぶっつけ本番より安心できるだろう。

 瑞希が教壇でかけた声には「はい!」「オッケーっす!」という元気のいい声が返ってくる。

 瑞希は家庭科室の中を見回して頷いた。

「今日は講師を呼んである。俺の友達の基宮。料理が得意で、菓子作りも得意なんだ。こいつに習おうと思う」

 隣を示す。

 そこにはしっかりエプロンをして、金髪をピンで留めた玲望が立っている。

 部員たちに向かって一礼した。

「基宮 玲望といいます。どうぞよろしく」

 玲望の挨拶にはぱちぱちと軽い拍手がかけられた。

 それで早速実習となる。

「まず、これを読んで。材料の計測や調理手順が書いてあるから」

 玲望はプリントを部員たちに配っていった。

 それは玲望の作ってくれたものだ。

 レシピはネットで調べたものだと玲望は言っていた。

 でもオーブンによって焼き具合などの調整が必要になってくるからと、わざわざ自分で一回試してくれたらしい。

 瑞希が「手伝ってくれないかな」と頼んだとはいえ、律儀である。

 そういうところが好きなんだな、と瑞希は横で自分もプリントに目を通しながら思ってしまった。