「ま、大体、上手く分けるんだけどな。弟は青で、妹はピンクだとか」

 玲望の声は懐かしそうで、そしてなんだか寂しそうにも聞こえた。

 今は一人暮らしをしている玲望。

 中学生までは実家で暮らしていたのだ。

 玲望の住める部屋がなくなるくらいに家族が多いので、一人で暮らせと追い出される、といったら人聞きが悪いが、とにかく一人で放り出されたも同然の玲望。

 まだ高校生なのだ。

 一人暮らしなんて寂しいに決まっている。

 家族仲が悪いわけではないなら、その気持ちはもっと大きいだろう。

 瑞希は割合頻繁に訪ねてきているとはいえ、ここに住んでいるわけではない。

 家でご飯を食べるときは両親と大体一緒である自分のことを、瑞希は考えた。

 その日あった何気ない話をしながら食べる夕食。

 たまに鬱陶しいと感じてしまうこともあるけれど、無いと寂しいだろうな、と思う。

 なのに玲望は食事のほとんどを一人で食べているのだ。

 それは、どんなに。

「どうした、取っていいんだぞ」

 瑞希がそんなことを考えていたからか、促されてしまった。

 ちょっと不思議そうな顔をされている。

 本人は気にしていないらしい。

 それは玲望の強いところだ。

「あ、ああ……ツユ、美味いな。どうやって作るの?」

 誤魔化すようにもうひとすくいそうめんを取って、ツユの話なんて話題に持っていく。

 玲望はいつも通りに「カツオから出汁を取って……」と説明してくれた。

 食べながら話すのは、学校のこと、玲望のバイトのこと、それから瑞希のボラ研のこと。

 そこから、ボラ研で夏休みの活動の計画を立てているという話になった。