「なかなか頼もしそうなポップじゃん」

 完成に近づいていたものを、汚さないように気をつけながら持ち上げる。

 そのくらいでは玲望も文句を言わなかった。

 それは野菜につけるのか、『ゴーヤチャンプルに!』と書いてあった。

 夏の定番、ゴーヤを使った料理だ。

 旬の食材を売りたいのだろう。

「ま、苦手じゃないし」

 玲望も満更でもないようだ。

 声がちょっと上向いた。

 いい時間になったので夕食にすることにする。

 そうめんは茹でるだけだが、ツユが必要だ。

 けれど玲望の持ってきたツユは、普段使っているボゥルに入っていた。

「これ、手作り?」

 なんとなくそうではないかと思ったけれど、玲望はなんでもない顔で頷く。

「簡単だし」

 いや、簡単じゃないだろ。

 瑞希は心の中で突っ込む。

 少なくとも男子高生が作るものとしては、かなり難しい部類に入るはず。

 瑞希はそうめんのツユの作り方など知らないけれど、家で食べるときだってツユは市販のものなのだ。

 よって、玲望の家でのほうが、むしろ自分の家より手作りされたものが多いくらいなのだった。

 本当に、嫁みたいだ。

 こんな、手作りのツユひとつからそう思うのもなんだと思うのだが、なにしろ恋人が自分のために作ってくれたのだ。

 嬉しくないはずがないだろう。