ちゃぶ台の上にはまだなにか紙のようなものが散らばっていた。

 黄色や赤が多い。

「それ、なに?」

 瑞希が身を乗り出すと、玲望は意外なことを言った。

「バイトのバイト」

「なんだそりゃ?」

 バイトの更にバイトとは。

 掛け持ちでもはじめたというのか。

 それは中らずと雖も遠からずだったらしい。

「スーパーのポップ書き。ちょっと追加収入になる」

「あー、なるほど。販促?」

「そういうこと」

 ちゃぶ台にはほかにスマホがあった。

 そこにはなにか、文字が大きく表示されていた。

『あ』とか『特』とか、謎の漢字だったけれど、販促だと思えば合点がいった。

『特売品!』とか書くのだろう。

 そのフォントの参考。

 玲望は器用だ。

 料理が得意なのもその一環なのだろう。

 今時、素材を拾ってきて印刷かなにかで作ってもいいのに、少しばかりだからと手作りすることにしたのか、素材を拾って体裁を整える手間が惜しかったのか、それとも玲望に仕事をくれることにしたのか……。

 詳細はわからないけれど、最後のもの、玲望に収入が増えるというならそれは喜ばしいと思った瑞希だった。