けれどそんなはずはなかった。

 玲望はペットボトルをちょっと掲げた。

 あ、そ、そうか、ホットレモンか。

 俺が物欲しそうに見てると思ったのか。

 理解して今度は急速に恥ずかしくなる。

 恥ずかしくなったが、今度は違う意味で胸の内が騒いだ。

 欲しいのか、とは。

 ひとくちくれるという意味か。

 予想して、かっと胸が熱くなる。

 いや、そんなことは。

 玲望に他意などあるはずがない。

 色々と考えてしまった数秒。

 玲望はちょっと不満そうな顔になった。

「いるのかいらないのか、どっちなんだ」

 それには答えなどひとつしかない。

 ごくっと瑞希は唾を飲んだ。

 こんな、ひとつのペットボトルを飲むのに緊張するなど小学生か。

 思ったものの、好きな相手なのだ。

 いくつになったって変わりやしないだろうとも思う。

「い、いいのか」

 ひとつどもってしまったのは不自然ではなかっただろうか。

 玲望はちょっと口をとがらせる。

 ああ、まるで直接キスでもねだっているよう。

 今度は薄くてほんのり桃色なくちびるに視線が吸い寄せられてしまう。