「あの、こっちでもいいんですか」

「あ、……はい。ドーゾ」

 指差して尋ねると店員は一瞬考えた様子で、でも頷いた。

 よって瑞希は玲望を招く。

「ホットレモンあるぜ。レモン好きだろ」

「あー、うん。じゃ、寒いしちょうどいいな。コレお願いします」

 名前の通りのレモンのドリンクを指した瑞希の提案。

 もう玲望も「名前がかわいいとか言うんじゃねーよ」なんてことは言わない。

「ありがとっしたー」

 最後まで気の抜けていた店員の声を背中に、瑞希と玲望はコンビニを出た。

 コンビニのすぐ前のベンチに落ちついて、早速ビニール袋からホットレモンを取り出す。

 玲望に渡した。

「んっ、あったけー」

 ホットのペットボトルを手に包んで、玲望はふわっと笑った。

 寒い中だ。

 一瞬掴んだだけの瑞希も、あたたかさが心地よかった。

「いただきます」

 そこは律儀に言い、きゅっと玲望は蓋を開けて口を付けた。

 こくこく、と喉が動く。

 その動きはなんだか妙に瑞希の心をざわめかせた。

 何故だろう、飲むということは本能的な行為だからだろうか。

 わからないけれど、玲望の白くてすんなりして、けれど男性らしく喉仏もある喉元に不意に触れたくなってしまった。

 きっと手で触れたら、とくとくと血の流れる感触がするだろう。

 数秒、見入ってしまって瑞希は視線を逸らした。

 まだ早い、そんなことは。

 まだ早い、はず、だった。

 けれど玲望がこちらを見る。

「欲しいのか?」

「えっ?」

 言われてぎくっとした。

 自分の欲求を見抜かれたかと思ってしまったのだ。