「今日は冷えるな」

 校門から離れ、帰るべく道を歩きだしながら玲望は呟いた。

 はぁっと息を吐き出す。

 まだ息が白く染まるほどではない。

 それを確かめたかったのだろうか。

「そろそろコートがいるよなぁ。玲望はコート、あるの」

「あるにはあるけど、買わなきゃなんだよなー。去年のコート、多分もう小さい。身体測定の結果からするに」

 玲望の言葉は憂鬱そうだった。

 それはそうだろう。

 コートは大きな買い物だ。安くなどない。

 普通の高校生ならいざ知らず、玲望が簡単に新しいコートを買えるかといったらそんなはずはないだろう。

 必需品だから、ちょっと無理をしてでも買わなければいけないものだろうけれど。

「そうだなー……今からセールってのもないだろうし」

「プロパーで売れる季節には、万に一つもないだろうね」

 玲望ははっきり言ってのけた。

 今までも服はそうして、なるべく安く手に入れてきたのだろう。

 よく知っているという口調だった。

「んー……フリマアプリとかで探すか……ディスカウントの店に行ってみるかなぁ」

 玲望は口の中でぶつぶつ言いだしたが、そのとき瑞希の頭にぽんと浮かんだこと。

「いや、買わなくてもいいかもしれないぜ」

 瑞希は言った。

 数日前のことを思い出したのだ。