そういう玲望の学校生活。

 格好つけているのだろうかと最初は思った。

 けれどそうではない、ということをそのうち知った。

 玲望にとっては、そうあることが自然であるのだった。

 格好つける、つまり無理をしているのではない。

 貧しい生活を(いと)うことなく、(ひね)くれることなく、自分の生き方として受け入れている。

 そしてそれを、より良いものにしようと努力している。

 だからきっと、隠している理由は『周囲に余計な気を使わせたくない』なのだろう。

 玲望は少々ぶっきらぼうなところがあるけれど、協調性はあるし、和を乱すことは好まない。

 そしてとても優しいのだ。

 よもぎ餅なんて弟、妹に作ってやるのと同じ。

 周囲の友人たちに対しても、なにかしてあげる気持ちも労力も惜しまなかった。

 そのくせ『気を使わせたくない』なんて、自分のことは棚にあげてしまうところがあるのは、完全に良いかといったら微妙なところである。

 そういうところに惹かれていった。

 世話焼きの面がある瑞希の心も刺激したのだろう。

『気を使わせたくない』と振舞う玲望が、力を抜けるような存在になれたら。

 恋心のスタートはきっとそんなところから。

 友人として過ごして、数ヵ月。

 多分玲望も、瑞希には随分気を許してくれたのだろう。

 家に招いて料理を振舞ったりしてくれるまでになっていた。

 生活に関して無理をしていないとはいえ、一ミリも負担になっていないなんてわけがない。

 秘密を知られてしまった、という形であっても、知っている、そしてそれを受け入れて秘密にしてくれている、という存在がいるのは嬉しいことだと思ってくれていたのかもしれない。

 そういう玲望の態度が、瑞希の中の恋心と期待を余計に後押ししてしまったわけだ。

 それで、恋心と、期待と、そして少しばかりの欲望と。

 色々と混ざったものを抱えながら歩いていた夕暮れのことだった。

 がらりとそれが変わってしまったのは。