秋の終わり。

 そろそろコートが必要かな、なんて、その日の朝感じたことをよく覚えている。

 昼間はそれほど寒くなかったというのに、夕方、帰路につく頃には日も落ちかけて、だいぶ冷え込むようになっていたのだ。

「なに、待っててくれたの?」

 急いで向かった校門。

 玲望はなにやらスマホを弄っていた。

 けれど速足でやってきた瑞希が声をかけると、すぐにそれから目を離した。

 ちょっと拗ねたように言う。

「別に。今日バイトないから」

 バイトがないならさっさと帰ってしまうことも多いのに。

 なのに瑞希の部活が終わるのを待っていてくれたのか。

 瑞希が嬉しく思ってしまっても仕方がないだろう。

 ボラ研が終わってスマホを取り出し、見てみるとメッセージがきていた。

 玲望からであった。

 瑞希の心は騒いだ。

 メッセージは『校門にいる』だったので。

 こうして待ち合わせて帰ること。

 春先に知り合ってからは割合よくあることだった。

 クラスは別だったけれどなにしろ同じ学年で、秘密を共有する仲にもなってしまったのだ。

 友人になるのはあっさりとだった。

 親友かと言われたら、よくわからなかったけれど。