玲望の部屋の掃除は、日がとっぷり暮れるまで続いた。

 もう外は真っ暗だ。

 家には「ちょっと遅くなる」と連絡したものの、そろそろ帰らなければいけないだろう。

 それでも部屋はだいぶ綺麗になった。

 居室は隅から隅まで掃除機をかけたし、ほこりも払った。

 キッチンのシンクや作業台も磨いて拭いた。

 レンジの掃除もした。

 日常の掃除にしてはじゅうぶんすぎるものができたといえる。

「ほら、飲み物作ったぞ」

 綺麗になった居室にどっかり座って、はーっと息をついた瑞希のもとへ玲望がやってきた。

 お盆にグラスがふたつ乗っている。

「お、手作り? レモネード……か?」

 グラスの中の飲み物は薄い黄色をしていたし、目の前のちゃぶ台に置かれたとき香ったのは、ふわっと爽やかで少し酸っぱい匂いだったので瑞希は正体をうまく当てることができた。

「ああ。昨日スーパーでキズありのレモンをもらってきたから」

 例によって、売り物にならない食材のお裾分けのようだ。

 それをこうして立派なジュースにしてしまうのだから、たいしたものである。

 ちょっと言い淀んだようだったが、玲望は言う。

「……いちお、世話になったから」

 掃除を嫌がるので気まずいのだろうが、こうして礼を言って、手作りの飲み物まで振舞ってくれるのだから律儀である。

「だってお前、ほっとくと部屋カオスにすんだもん」

「うるさいな。暮らせればいいんだよ」