それで、一緒に帰ることになった。

 校門まできていたので、外へ出て通学路を歩く。

「さっきのさ、ひとに言わないでくれるかな」

 彼の言葉は単刀直入だった。

 瑞希はちょっと目を丸くしたが、すぐに思い当たった。

 まぁ確かに。

 よもぎを摘んでいたのも謎だし、咥えていたのはもっと謎だし、それはおそらくひとに知られたくないことなのだろう。

 想像には難くなかった。

「はぁ。まぁ、かまわないけど。じゃ、なんで摘んでたのかとか聞いていい?」

 まさか本当に染料にするためではないに決まっている。

 口止めされるのだから聞くくらいはいいだろう。

 よって質問してみたのだが、彼は案外明るい口調で言った。

 口止めをしてきた割には、あまりふさわしくない口調だった。

「春にはよもぎ餅を作るのが習慣でさ。その、弟や妹が好きなもんだから」

「へぇ……」

 よもぎ餅。

 馴染みがなくはない食べ物である。

 ただ、瑞希にとってそれは、スーパーで売っているものだった。

 春先になれば和菓子コーナーにたくさん置いてある。

 家で作るという発想はなかった。

 おまけにそのへんでよもぎを摘んで作るなど。

 そういう発想はもっとなかった。

「あんなにたくさん生えてるの、見たからつい……」

 だがそのあとの言葉に瑞希はちょっと目を丸くしてしまう。

 照れたような表情と口調。

 やはり、別に女の子のようではないのに、無邪気なかわいらしさが滲んでいた。

 どうやら変わり者のようなのに、見た目は綺麗であるし、こんなあどけない口調で優しいことを言うものだから不思議な気がした。