「……ああ。瑞希がそう言ってくれるなら、俺もやってみるよ」

 今度は気恥ずかしそうな声ではなかった。

 しっかりしていた。

 そっと瑞希の背中に手が触れる。

 玲望が軽くであるが、背中を抱いてくれた感触だ。

 やってみる、の意味は聞かずともわかった。

 瑞希だけが頑張るのではない。

 玲望もなにかしら……バイトなのか、家に話を通すことなのか。

 色々あるだろうが、それを『やって』みてくれるということだ。

 だって、パートナーになるのだ。

 どちらかだけが引っ張るものではないし、一緒に歩いていくものなのだ。

 ことりと玲望が瑞希の肩に顎を乗せた。

 心地良さげだというような仕草。

「汗臭いな」

 しかし言ってきたことはかわいらしくなかった。

 この話にはまったくふさわしくない。

 瑞希は脱力してしまう。

 確かに自分も汗のにおいは感じたけれど。

「帰ったら風呂りゃいいだろ」

「ま、違いない」

 言い合いって、そのあとは笑いになった。

 くすくすと小さな笑い。

 ずっと抱えていたいと思う。

 こんな話が、やりとりができる関係を、ずっと。