玲望はまた黙った。

 今度は三十秒よりもっと長く、一分にも近かったかもしれない。

 普段なら茶化していたかもしれない。

「プロポーズかよ」なんてふうに。

 でも今はそんなものはない。

 玲望はそんなやつではないから。

 瑞希の言葉を受け止めて、自分で考えて、返してくれる。

 きっとそのための一分間だった。

「いいぜ」

 返ってきた言葉は実に簡潔だった。

 おまけに受け入れてくれるもの。

 なんとなく、そう言ってくれるのではないかと思っていた。

 でも流石に瑞希はほっとしてしまう。

 こぶしからも力が抜けた。

「一緒に暮らす、かぁ。いいな、それ」

 玲望は瑞希から視線を外した。

 真っ暗な海を見る。

 海ではなく、その向こう、もっと遠くを見るように。

 玲望の言葉は示していた。

『誰かと一緒の家』。

 やはりどの程度かはわからないけれど、そうあったらいいなと思ってくれていたこと。

 そして勿論、瑞希がそう言ったことで、嬉しく感じてくれたことも。

「いつかはわからないけどな……大学と専門に入るときは無理だろうし……。でも、大学に入ったらバイトするし、それなら途中からでも住めるかもしれないだろ。遅くても、大学を出たら必ず……」