「ああ。……玲望」

 瑞希は足を止める。

 数歩先を行っていた玲望がそれで振り返った。

 まったくさっきと同じ状況であった。

 ふわりと玲望の金髪が揺れた。

 さらさらの金髪。

 汗で湿っているかもしれないが、その美しさに違いはなかった。

 ふと、瑞希は懐かしいことを思い出した。

 もう二年半近く前のこと。

 玲望と裏庭で出会ったこと。

 そのときにはこれほど仲良くなれるなんて思いもしなかったし、恋人同士になれるなんてことは、もっと思いもしなかった。

 でも良かったと思うのだ。

 こういう関係になれて、仲が深まって。

 玲望と一緒に居ることで、日々を過ごすことで、たくさんのものをもらったから。

 だからそれを返す、ではないが。

 二人でもっと良いものにするために、ここに来た。

 玲望はなにか、重要なことを言われると悟ったのだろう。

 受け止めるという気持ちが浮かぶような、凪いだ顔で瑞希を見つめてくれた。

 悪いことではないとわかっている。

 そういう顔だ。

 そう信頼してくれることが嬉しくてならない。

「玲望。いつか俺と一緒に暮らしてほしい」

 ぎゅっとこぶしを握って、瑞希は言った。