「そうだな。なんか懐かしいような気にもなるし」

 瑞希が言ったことには笑みが向けられたけれど。

 さっきの意趣返し、とでも言いたげなちょっと意地悪なものも混ざった笑みを。

「じじむさいなぁ」

「なんだよ!? 懐かしいに年齢もなにもあるか」

 小突き合いになりつつ、歩いていく。

 さくさく、という音もしない。

 強いて言うならざくざく、である。

 歩き心地も良くない。

 けれど潮風だけではなく、ひらけているからかとても爽快だった。

 夏の暑さもここまでとは比べ物にならない。

 海を渡る風が涼しいのだろう。

「で? すっきりしたのか」

 不意に玲望が口火を切った。

 コンビニで聞いてきたことだ。

 ちょっとどきりとしたけれど、瑞希はそっと手をこぶしの形に握った。

 確かにすっきりした。

 もんやり考えていたことが、形になったのだから。

 それをくれたのは、ここまで自転車で走ってきたからではない。

 道中、考えたからでもない。

 玲望が一緒に走ってくれたからだ。