ちょっと気障(きざ)なことを言った自覚はある。

 気恥ずかしい。

 けれど言うべきところである。

 本当にそうなのだから。

 玲望と海が見たかった。

 玲望に見せたいと思ったけれど、それだけでもない。

 一緒に、見たかったのだから。

「そう」

 それだけ答えた玲望の顔は、もう不機嫌ではなかった。

 どちらかというと照れている、という表情にも近い。

「でもそれだって、お前、独りで行かせるもんかよ」

 そんな表情をしつつも、ぼそりと玲望が言ったこと。

 瑞希は目を丸くしてしまう。

 玲望も同じ気持ちだったと言ってくれたようなものだ。

 そんなことを言ってもらえようとは。

 瑞希が驚いたのを見て、玲望は照れているような顔をしかめた。

 照れ隠しにしか見えなかったけれど。

「ほら、せっかく来たんだろ。見に行こうぜ」

 ぱっと玲望は瑞希からよそを向いて、すたすたと行ってしまう。

 瑞希はその後ろ姿を数秒見ていたけれど、ふっと笑ってしまった。

 玲望らしいことだ。

 猫のよう。

 気まぐれで、近付いたと思えばふぃっと去ってしまって、でも自分の傍に居てくれる。

「待てよ。暗いから階段、落っこちんなよ」

「馬鹿にすんな」

 柵の切れ端にある階段。

 一歩下りながら玲望は言ったけれど、それはもうまったくいつも通りのものになっていた。