「つ……着いた……あっちぃ……」

 後半、どうも飛ばしすぎたようで、目的地に着いたとき、玲望はぜぇはぁしていた。

 おまけに汗だく。

 真夏に、いくら涼しめの夜の時間とはいえ、自転車で二時間も走ったのだ。

 そりゃあ汗も大量にかくだろう。

 どうにかこうにか、たどり着いた海。

 零時はとっくに過ぎて、真夜中もいいところだったので真っ暗であった。

 海沿いの駐車場に自転車を停めて、鍵をかける。

 そうしてから柵のあるほうへ向かっていった。

 駐車場は少し高いところにあって、端に柵があって、そこから海が一望できる。

 近くにある階段を下りれば浜辺に行けるのである。

「やー、お疲れ」

 ぽん、と肩を叩く。

 玲望はじとっとした目で瑞希を見た。

 まだ呼吸はちょっと荒い。

「お前なぁ、お前に付き合ってやったんだろう」

 飛ばしたのは自分だというのに、玲望は恨めしそう。

 瑞希はそれに、くくっと笑ってしまう。

「付き合って、海までチャリ飛ばしてくれたのはお前だろ」

 瑞希のそれはからかいではなかったけれど、そういう意味がなくもない。

 玲望は今度、眉を寄せた。

 普段見せる、ちょっと不機嫌という顔になる。

「うるさいな。付き合わなきゃ一人で突っ走ってたかもしれねぇじゃん」

 言い訳というように言われたけれど、それはちょっと違う。

 瑞希はその不機嫌な顔に笑ってみせた。

「一人で行くかよ。お前と来たかったのに」

 玲望は数秒、黙った。