「ああ……ちょい待って。地図、見るわ」

 言って、瑞希は自転車を道の端に寄るように進んで、止めた。

 玲望もちょっと先に行ったものの、止まる。

 するすると自転車を引いて瑞希のほうへやってきた。

「えーと……多分あとちょっとなんだよな。海側のほうに向かう道だから……あれ、北ってどっちだ」

 瑞希が取り出したスマホ。

 表示された地図。

 GPSはちゃんと働いているようで現在地がぴこぴこ光っていたけれど、咄嗟にわからなかった。

 玲望はそれに笑ってくる。

 おかしい、という声音と声で。

「なんだ、地図も読めないのかよ」

「そういうわけじゃねぇ」

 からかわれたも同然だったので、瑞希は憮然とした。

「ここ見りゃいいだろ、あ、設定わかりづらいじゃん。ちょっと貸せよ、見やすくするわ」

 玲望は瑞希の手元を覗き込んで、地図の表示を見たらしく、ひょいっとスマホを取り上げてしまった。

 瑞希はちょっと驚いたものの、されるがままになった。

 玲望がわかるなら任せたほうがいい。

 玲望は慣れているのか、ひょいひょいとあちこちに触れていって、どうやら設定を変えてくれているらしい。

 その様子は何故か、楽しそうですらあった。

 さっきまで文句ばっかりだったのに。

 体も疲れているだろうに。

 どうしたことだろう。