玲望の気持ちは聞いたことがない。

 でもちっともわからないわけじゃない。

 瑞希の下手くそな料理に笑いつつも、おいしそうに食べてくれたのだし、それに言ってくれた。

 『誰かの作ってくれたメシってのはいいもんだ』。

 その言葉の中にあった気持ち。

 単純な言葉だけのことではないに決まっている。

 玲望からも望んでくれる気持ち、僅かかもしれないけれど、あってくれる。

 瑞希にはそう感じられた。

 そりゃあ、重さや内容がどの程度かなんてことは、ひとによって違うだろう。

 重みがまったく同じなんてことはあり得ない。

 でも。

 同じ種類の気持ちがあれば、あるいは。

「おい、瑞希。これ、どっちだ」

 いつの間にか玲望のほうが先になっていた。

 自転車を漕ぐ速度をゆっくりにして振り返ってくる。

 道がわからなくなったのだろう。

 見れば、走っていた国道はだいぶ細くなってきていて、大きな岐路があった。