瑞希はすぐに返事ができなかった。

 なにか、あった……。

 あったといえばそうだし、ないといえばそうだ。

 どちらも正しいし、どちらでもない。

 だからなんと答えたものか迷ってしまう。

 けれど確かなのは、玲望が『瑞希がなにか、思うところあった』と察してくれたこと。

 そっちのほうに満足してしまう。

 質問してきているのは玲望のほうだというのに。

「いや? あるような……ないような……」

「なんだ、そりゃ」

 瑞希の曖昧な返事に、玲望は顔をしかめた。

 今度のものは、多分、呆れの意味。

 でもそれ以上、説明できない。

 瑞希はなんと言おうか迷ったのだけど、その前に玲望が言った。

 瑞希の顔を見ないで、だ。

「こんな真夜中に、海行こうなんてチャリ飛ばすようなヤツが、なにもなくあるもんか」

 言われたことに、瑞希は一瞬、止まった。

 思考も、言葉も。

 確かにそうだ。

 なにもないのに、海に行こうなんて突飛なことを提案した挙句、実行するものか。

 ……俺より玲望のほうがわかっているのでは。

 瑞希は一瞬だけ止まった思考のあと、感じてしまった。