「あー……でも夜中はやっぱ涼しいな。街中から離れたからかもしれないけど」

 瑞希は上を見上げた。

 当たり前のように、真っ暗な夜空が広がっている。

 暮らしている街はとっくに出た。

 それどころか、いくつか市町を越しただろう。

 今、どのあたりにいるのかはぼんやりしかわからないけれど、普段は来ないところ。

 自転車では絶対に来ないところ。

 それだけは確かであった。

 このあたりは住んでいる街よりちょっと田舎のようだ。

 道も広々しているし、車も少ない。

 それに、空が綺麗に見える気がしたのだ。

 単にひらけているからかもしれないが。

「……そだな」

 もぐもぐ、ごくん、と音がして、玲望が唐揚げを平らげて、そのあと相づちを打ってくれた。

 その短い言葉が、瑞希の「楽しい」と遠回しに肯定してくれるものであったこと。

 瑞希にはちゃんと伝わってきた。

「瑞希」

 不意に玲望が呼んできた。

 瑞希は何気なく、「なに?」と答えて玲望のほうを見て、あれ、と思った。

 なんだか居心地悪げな様子の玲望がそこにいたのだから。

「なんか……あったのか」

 その様子の通り。

 ためらったという口調で、少しだけ途中で切って、玲望は口に出した。