「俺は楽しいけどな」

 玲望に噛みつかれたけれど、瑞希が言ったのはそれであった。

 本心からだ。

 こんな夜中……コンビニで見た時計はもう零時に近付いていた……に、玲望と二人で自転車で走ってきたのも。

 国道沿いにぽつんとあった、知らないコンビニに入るのも。

 そこでペットボトルのお茶や、唐揚げなんて買って、コンビニ前にあるベンチに座って食べるのも。

 すべてが楽しい。

 瑞希の言葉に、玲望は黙った。

 ただ、じっと瑞希を見てくる。

「でも悪かったな。バイトで疲れてんのに」

 急に瑞希の言葉が殊勝になったからか、玲望は顔をしかめた。

 不快という表情ではなく、ちょっと気まずげな顔のしかめ方。

「……今更言うか? こんなとこまで来といて」

 それだけ言って、ふいっと視線を逸らした。

 紙の箱に入っていた唐揚げ、最後の一個をつまようじに刺して、勝手に口に運んだ。

 もぐもぐと口が動く。

 瑞希はそれを見て、笑みを浮かべてしまった。

 実に玲望らしい物言いである。