「はぁー……久々に瑞希の無茶に振り回された……」

 綺麗な見た目を台無しにするような、脚を大きく開いただらしない座り方でベンチに腰掛けた玲望は、不満を大きなため息にして吐き出してくる。

 コンビニで買ったのはペットボトルの飲み物。

 それからちょっとした食べ物。

 レジ横のケースに入っているものの中から「どれか食う? 引っ張り出した詫びに奢る」と玲望にも促した。

 それで二人で唐揚げやらソーセージやらかじっている休憩だ。

「そうか? でも楽しいだろ」

 食べ物でお腹も膨れて、瑞希はペットボトルを勢いよくあおってから、ぬけぬけと言った。

 だが、玲望はキッと睨みつけてきた。

「楽しいか! 黙々チャリ漕いでるだけで! どこが!」

 その主張はもっともである。

 おまけに玲望は無理やり連れ出された形である。

『自転車で二時間かけて海に行く』なんてことに、同意して出てきたのとは少々違うのだ。

 それならこういう主張も致し方無い。

 けれど瑞希は知っている。

 玲望は本当に気が向かなければ、とっくの昔に帰っているようなヤツだと。

 それは瑞希に付き合ってくれているのではなく、多少は。

 ほんの少しかもしれないけれど、玲望自身にも、行き先への興味があるから。

 一緒に来てくれているのである。

 自転車二時間はやはり、ラクな旅路ではないから、文句は言われて仕方がないが。