それに、音だけではない。

 玲望の持つ空気。

 それがしっかり伝わってくるのだ。

 不思議だ、触れあっているわけでもないのに。

 話をしているわけでもないのに。
 
 ただ自転車に乗って、海を目指している。

 そんな奇妙な状況なのに、瑞希には確信があった。

 玲望と二人で行けば、ちゃんと着けるだろう。

 この道を走った先にある海に。

 夜中になっているだろうから、ただの真っ暗な海だろうが、確かに海という場所に。

 そして『着ける』のはなんとなく、『海』という場所だけではない気がした。

 ふと、視線の先になにか明るい場所が見えた。

 国道沿いにあるコンビニだ。

 走り出してそろそろ一時間弱。

 休憩してもいいだろう。

 瑞希はちょっと振り返った。

 玲望も黙々と自転車を漕いでいたけれど、瑞希が振り返ったのを見て、視線を向けてくれた。

 目が合う。

 瑞希はその目に、にっと笑って見せて、手を持ち上げて指差した。

「寄ってかね?」