三十分も経つ頃には、二人とも黙った。

 シャコシャコ、と自転車を漕ぐ音だけが夜の中に響いている。

 別に言い合いから気まずくなったわけではない。

 さっき自分で言った通り、しゃべるのは体力の消費になるからだ。

 なにも言わずに、ただ自転車で走っていくのは夜の中。

 国道に出たのでひらけていた。

 自転車なので車道を走るが、もう夜中に近いのだから、通る車もそう多くはなかった。

 注意は必要だが、気を張りっぱなしでもない。

 シャコシャコ自転車を漕ぐ音。

 時折、車が横を走って抜かしていく、ブォン、という音。

 音はそれだけ。

 身を包むのは、街灯だけの薄暗い夜。

 玲望はうしろを走っているはずだ。

 並走はできないので、瑞希が先に立って走っている形。

 自分の漕ぐ自転車とは違う音が、後ろからもする。

 そこから、ちゃんとついてきてくれていることはわかるのだった。