「……なにしてんの?」

 振り返ったときに見えたネクタイの色は、緑。

 自分と同じ。

 学年ごとに違う色をしているネクタイは、彼が一年生であることを示していた。

 よって、敬語をやめて再度問いかけた。

 瑞希の質問に、彼は顔をしかめて口から草を取った。

 なにか、やわらかそうな不規則な形をしている草だ。

 草でも食べていたというのか。

 より解せない。

「よもぎを摘んでたんだ」

「よもぎ……?」

 瑞希の姿、やはりネクタイからだろう。

 そしてため口から同級生だと向こうも悟ったようだ。

 普通の口調でひとこと言った。

 よもぎ。

 口に咥えていたのはよもぎだという。

 そして近くにはビニール袋があって、その中にいくらか草が入っているのも見えた。

 どうやらよもぎ摘みをしていたというのは本当らしい。

 けれど学校の裏庭で一体何故よもぎ採取など。

 しかしそれを質問する前に、違う声がした。

「なにしてんだ? 梶浦(かじうら)

 名字を呼ばれて瑞希が振り向くと、ボラ研の先輩が立っていた。

 竹ぼうきを手にしている。

 今日、瑞希と同じく裏庭の清掃に宛てられていた先輩だった。

「あ……その、先客が」

 そう聞かれても、さっき話しかけて、よもぎを摘んでいると聞いただけだ。

 説明のしようがない。

「先客?」

 先輩は、ひょこっと瑞希の横から覗き込んだ。

 金髪の彼は咥えていた草はすでにどこかへやってしまっていて、ビニール袋だけ持って何食わぬ顔をしていた。

 瑞希の先輩に、しれっと答える。

「よもぎを摘んでいて……草木染めをするんです」