「そっか! そりゃ良かった」

 瑞希は最初、それを言葉通りに受け取った。

 けれど、数秒してはっとする。

『誰かの作ってくれたメシ』。

 玲望は滅多に、食べられないのである。

 瑞希がお邪魔するときも、ご飯は大抵玲望が作ってくれる。

 こんな、奇妙な点やミスだらけの自分のご飯ですら、玲望は普段、食べることがないのだ。

 だからきっと、わざわざ口に出して言ってくれるほど、喜んでくれた……。

 その事実は瑞希の胸をちょっと痛ませた。

 前には、毎食、独りでご飯を食べる玲望に胸が痛んだことがあった。

 それと同じたぐいのことである。

 玲望が一緒にご飯を食べられるような相手が、居たらいいのに、と思う。

 そしてその相手が自分であったらいいのに、とも思う。

 いつかはそうなりたいと、思うけど。

 とりあえずすぐには叶わない。

 もどかしい、と思ってしまいながら、瑞希は野菜炒めの最後のひとくちを摘まんだ。

 切り方も火の通りも、勿論、味付けも完璧な、玲望の野菜炒めとは程遠いもの。

 自作のその野菜炒めはやっぱりちょっと甘辛い味が強くて、瑞希の心にじわりと染みた気がしたのだった。