花火を始めた頃は星が綺麗に輝いていた空は、今や雲に覆われ、その間をうっすら月明かりが照らしていた。静かに降り始めた雪が、僕たちの周りに舞い降り、冬の夜にさらなる幻想的な雰囲気を添えていた。
「準備できたし、雪が強くなる前に早く終わらそうか」
「うん! そうだね」
僕たちは同時に線香花火に火をつけ、勝負を始める。雪が降りより一層暗くなった河川敷に小さな火花の明かりが灯された。
「そういえばさ、トオル」
「ん? どうしたの?」
「ここに着いたときも言ったけど、“星が綺麗だね”」
「え? 星?」
空を見上げる。しかし空には星はどこにも見えない。今、視界に映るのは、ヒラヒラと空を舞い降りてくる雪と、パチパチと小さく音を立てながら火花が弾ける二つの線香花火。冬と夏。正反対の季節の風物詩が共になり、どこか幻想的で綺麗な情景だけだった。
「あ……」
先に消えてしまったのはアカネの線香花火だった。
「私の負けだね」とアカネが少し悔しそうに笑う。
「じゃあ、罰ゲームは僕が決めていいんだよね?」
「うん、でもそんなに難しいものはやめてね」
僕はしばらく考えた後、優しく微笑んで言った。
「よし、決めた」
「それじゃあ、聞こうかなトオルが私にする罰ゲーム」
僕はアカネの目を見つめながら“彼女からの告白の返事”をした。
「“月も綺麗だよ”」
「え?」
僕らを照らす線香花火が消えないよう、優しくアカネの唇を奪った。
アカネの瞳が大きく見開かれ、驚きと喜びが交錯した表情を浮かべる。パチパチと音を立てていた僕の線香花火は、唇の温もりと共に静かに消えた。ほんの数秒の間、静寂が流れる。彼女は赤くなった顔をマフラーで隠した。
「ずるいよ、トオル」とアカネが小声で言う。
「告白してきたのはそっちだろ」
「そうだけど、そうなんだけど! まさか言葉の意味知ってると思わないじゃん」
「“星が綺麗だね”だっけ? 確か意味は“私の気持ちをあなたは知らない”だろ?」
「言わなくていいよ! 余計に恥ずかしい」
「ごめん、ごめん。でもちゃんと伝えたかったんだ」
僕は笑いながら、彼女の頭をそっと撫でた。
「……いつから気づいてたの」
「ずっと前から。というか僕が君の気持ち気づいてないと思った?」
「意気地なし……気持ちに気づいてて告白してこないなんて」
「ごめんって」
「バカ……バカ、バカ、バカ! ちゃんと返事の仕方も知ってるなんて。トオルはいつからそんなロマンチストになったの!」
「それは、ロマンチックが好きな誰かさんの影響でね」
アカネは少し黙った後、小さく溜息をついて顔を上げた。
「ねえ、トオル。これからもずっと一緒にいてくれる?」
「もちろん。これからもずっと一緒だよ」
僕たちは再び手を取り合い、夜の寒さを感じながらも心の中は暖かかった。どんなに忙しい日々の中でも、こうした特別な時間を持つことで、心に彩りを添えることができる。
高校最後の冬休み、六花が降り注ぐ中、火の花が彩った夜は僕たちにとって一生の思い出となった。星が見えない夜でも、僕たちの心にはたくさんの星が輝いているようだ。
「準備できたし、雪が強くなる前に早く終わらそうか」
「うん! そうだね」
僕たちは同時に線香花火に火をつけ、勝負を始める。雪が降りより一層暗くなった河川敷に小さな火花の明かりが灯された。
「そういえばさ、トオル」
「ん? どうしたの?」
「ここに着いたときも言ったけど、“星が綺麗だね”」
「え? 星?」
空を見上げる。しかし空には星はどこにも見えない。今、視界に映るのは、ヒラヒラと空を舞い降りてくる雪と、パチパチと小さく音を立てながら火花が弾ける二つの線香花火。冬と夏。正反対の季節の風物詩が共になり、どこか幻想的で綺麗な情景だけだった。
「あ……」
先に消えてしまったのはアカネの線香花火だった。
「私の負けだね」とアカネが少し悔しそうに笑う。
「じゃあ、罰ゲームは僕が決めていいんだよね?」
「うん、でもそんなに難しいものはやめてね」
僕はしばらく考えた後、優しく微笑んで言った。
「よし、決めた」
「それじゃあ、聞こうかなトオルが私にする罰ゲーム」
僕はアカネの目を見つめながら“彼女からの告白の返事”をした。
「“月も綺麗だよ”」
「え?」
僕らを照らす線香花火が消えないよう、優しくアカネの唇を奪った。
アカネの瞳が大きく見開かれ、驚きと喜びが交錯した表情を浮かべる。パチパチと音を立てていた僕の線香花火は、唇の温もりと共に静かに消えた。ほんの数秒の間、静寂が流れる。彼女は赤くなった顔をマフラーで隠した。
「ずるいよ、トオル」とアカネが小声で言う。
「告白してきたのはそっちだろ」
「そうだけど、そうなんだけど! まさか言葉の意味知ってると思わないじゃん」
「“星が綺麗だね”だっけ? 確か意味は“私の気持ちをあなたは知らない”だろ?」
「言わなくていいよ! 余計に恥ずかしい」
「ごめん、ごめん。でもちゃんと伝えたかったんだ」
僕は笑いながら、彼女の頭をそっと撫でた。
「……いつから気づいてたの」
「ずっと前から。というか僕が君の気持ち気づいてないと思った?」
「意気地なし……気持ちに気づいてて告白してこないなんて」
「ごめんって」
「バカ……バカ、バカ、バカ! ちゃんと返事の仕方も知ってるなんて。トオルはいつからそんなロマンチストになったの!」
「それは、ロマンチックが好きな誰かさんの影響でね」
アカネは少し黙った後、小さく溜息をついて顔を上げた。
「ねえ、トオル。これからもずっと一緒にいてくれる?」
「もちろん。これからもずっと一緒だよ」
僕たちは再び手を取り合い、夜の寒さを感じながらも心の中は暖かかった。どんなに忙しい日々の中でも、こうした特別な時間を持つことで、心に彩りを添えることができる。
高校最後の冬休み、六花が降り注ぐ中、火の花が彩った夜は僕たちにとって一生の思い出となった。星が見えない夜でも、僕たちの心にはたくさんの星が輝いているようだ。