「なるほど……魔力が血液みたいな感じなのね。ということは……このあたりに魔石が」
二体目のサイクロプスを倒した後、御崎は配信しながら、グロ映像だけは見せないように心臓に手を突っ込んでいた。
冷静な言葉と表情が、あまりにも怖く見える。
「おもちは見ちゃダメです!」
「キュ、キュウ……」
思わずおもちの目を手で覆う。といっても、これをしたのはおもちだが……。
『おもちGJ』『おもちの最速の炎ブレス、俺でなきゃ見逃してるね』『ミサキは何してるんだ』『解剖医ミサキシーズン1』
「あった! ふふふ、これが魔石!」
立ち上がった御崎は、煌びやかな宝石のようなものを持っていた。大きさはそれほでもないが、ダイヤモンドのように光っている。
テレビで見たことはあるが、これが魔石なのか。
「思ってたより綺麗なんだな」
「大きさ的に結構当たりなんじゃないかな? ドロップ確率もかなり低いって聞いたし。そもそも、サイクロプスが出現する情報はなかったから、もしやと思ったけど」
魔石とは、モンスターの心臓代わりのようなものだ。低級な魔物には存在しないが、ある程度強い魔物には存在している。
魔力ポンプの役割を果たしているので、それによって身体能力が向上、魔力も強くなる。
人間が食べると魔力が向上するが、外見が綺麗なので、装飾、工芸品としても利用方法がある。
なので、それなりに高値で売ることも可能だ。
それと御崎の言った通り、この階層ではサイクロプスは出現しないと資料に書いていた。
一体何が起きてるのか、それはわからない。
『魔石のASMRキボンヌ』『鋭利すぎて口切れそう。飲み込むんだっけ?』『結婚指輪の元、ゲットだぜ!』
ただ、コメントは盛り上がっている。しかし結構グロいので、年齢制限とか必要ないのかな……?
「魔石はひとまず置いておくとして、ロプスちゃんはどうしようか」
「ロプスちゃん……?」
「あ、いや、サイクロプスの死体の回収だな」
「流石に大き過ぎるよね……。一定時間経過して消えて、また新たなモンスターとして生まれ変わるってのが定説だし、放っておいていいんじゃない?」
そういえばもらった資料に、素材を回収できるアイテムがあると書いていた。
今度、魔法具店に行ってみるか。
「だったらこのまま放置しておくか」
「そうね、……魔石ちゃんも取り出したし、まいっか♪」
キラキラと光る魔石を持ち御崎の目には、$マークが浮かんでいる。
ダンジョン攻略ってのは聞こえはいいが、やってることって結構野蛮だよなあ……。
「キュウキュウ♪」
『おもちが勝利のダンスしてる』『かわいい。スクショタイム!』『進めー、このままボス戦だー』
まあでも、これも生きるためか。くだらない偽善はやめよう。
命は平等じゃない。それはわかってる。
非情になれとは言わないが、奪う以上、覚悟は持つべきだ。
「切り替えだ。よし、先に進もう」
と、思っていた矢先、何かを踏んづけた。
ゴムみたいな、柔らかいゼリーみたいな。
むにむに、むにむに。
視線を下げると、地面は草っぱら。いや、良くみるとなんだか赤い?
「キュウー!」
突然、鼻をクンクンさせたおもちが近づいてくる。そして、口をあんぐりとあげて赤草を食べようと――。
「や、やめてくださいやめてください。ごめんなさいッごめんなさいぃ!」
次の瞬間、赤草から声が聞こえた。小さな女の子のような声で、なんというか萌え声だ。
『地面から声が……?』『草が喋った!?』『可愛い声してる』『なんだこれ?』
思わず警戒しながら一歩下がって、おもちと御崎に声をかけた。
「御崎、おもち、離れろ!」
「キュウッ!」
「喋る魔物!?」
むにゅりと起き上がると、赤草は徐々に――姿かたちを変えていく。
「ごめんなさい、ごめんなさい。敵意はないんです、違うんです違うんです」
謝罪を繰り返しながら現れたのは、メラメラ燃え盛っているスライムだった。
普通は確か青色だ。何だ……こいつ?
『喋ってる!?』『幼女っぽい声』『燃えてる』『逆に怖い』
「御崎、知ってるか?」
首を横に振る。どうやら知らないらしい。
『初めてみた。スライム?』『亜種っぽい』『殺せ殺せー』
コメントは音声で出るようにしてる。
それに反応したのかスライムが呼応して叫ぶ。
「やめてー! 殺さないでー! 美味しくないよー!」
……怪しいな。
「よしおもち、攻撃だ」
「キュウ!」
「わ、わ、わ、やめてやめてくださいッ お願いします!」
けれどもスライムは、人間の言葉で謝罪を繰り返す。
流石に可哀想なのか、おもちは悲し気な表情を浮かべた。
「だめよ、油断しないで!」
そんなことはお構いなく、御崎はスキルを発動。
スライムが空中に浮き、更に騒ぎ立てる。
『ミサキちゃん容赦ない!』『当然、即殺るべき』『ヤレー!』『可哀想感ある』
「わ、わ、わ、わ、わ、わ、わ、やめてやめてやめてやめて、何でもしますから! ボクは悪いスライムじゃない!」
「どこかで聞いたような台詞だな……」
「阿鳥、人間の言葉を発する魔物は危険だと聞いたことがある。油断しないほうがいい。おもっちゃん、ひとおもいにやっちゃいなさい」
「キュウ……」
なんだか可哀想な気もするが、ついさっき偽善はやめようと思っていたところだ。
仕方ない。これも世のため人の為、というか俺の為。
「すまない……スライム。――おもち、ブレスだ!」
「キュ……キュウー!!!!」
「わー! やめてー! しんじゃうー! しんじゃうよー!」
戸惑いを見せたおもちだったが、鋭い眼光にキュッと戻し、炎のブレスを発射した。
『容赦ないwww』『おもち、非情になれ!』『仕方ない、これが世の中の摂理』
サイクロプスと同様、一直線に放たれた炎はファイアスライムにぶつかって――完全に吸収されてしまう。
炎タイプと言えども、おもちの攻撃はそんな生易しいもんじゃない。
「……嘘だろ?」
「あついよー! あついよー! 撃たれたー!」
しかしスライムは無傷だった。
二体目のサイクロプスを倒した後、御崎は配信しながら、グロ映像だけは見せないように心臓に手を突っ込んでいた。
冷静な言葉と表情が、あまりにも怖く見える。
「おもちは見ちゃダメです!」
「キュ、キュウ……」
思わずおもちの目を手で覆う。といっても、これをしたのはおもちだが……。
『おもちGJ』『おもちの最速の炎ブレス、俺でなきゃ見逃してるね』『ミサキは何してるんだ』『解剖医ミサキシーズン1』
「あった! ふふふ、これが魔石!」
立ち上がった御崎は、煌びやかな宝石のようなものを持っていた。大きさはそれほでもないが、ダイヤモンドのように光っている。
テレビで見たことはあるが、これが魔石なのか。
「思ってたより綺麗なんだな」
「大きさ的に結構当たりなんじゃないかな? ドロップ確率もかなり低いって聞いたし。そもそも、サイクロプスが出現する情報はなかったから、もしやと思ったけど」
魔石とは、モンスターの心臓代わりのようなものだ。低級な魔物には存在しないが、ある程度強い魔物には存在している。
魔力ポンプの役割を果たしているので、それによって身体能力が向上、魔力も強くなる。
人間が食べると魔力が向上するが、外見が綺麗なので、装飾、工芸品としても利用方法がある。
なので、それなりに高値で売ることも可能だ。
それと御崎の言った通り、この階層ではサイクロプスは出現しないと資料に書いていた。
一体何が起きてるのか、それはわからない。
『魔石のASMRキボンヌ』『鋭利すぎて口切れそう。飲み込むんだっけ?』『結婚指輪の元、ゲットだぜ!』
ただ、コメントは盛り上がっている。しかし結構グロいので、年齢制限とか必要ないのかな……?
「魔石はひとまず置いておくとして、ロプスちゃんはどうしようか」
「ロプスちゃん……?」
「あ、いや、サイクロプスの死体の回収だな」
「流石に大き過ぎるよね……。一定時間経過して消えて、また新たなモンスターとして生まれ変わるってのが定説だし、放っておいていいんじゃない?」
そういえばもらった資料に、素材を回収できるアイテムがあると書いていた。
今度、魔法具店に行ってみるか。
「だったらこのまま放置しておくか」
「そうね、……魔石ちゃんも取り出したし、まいっか♪」
キラキラと光る魔石を持ち御崎の目には、$マークが浮かんでいる。
ダンジョン攻略ってのは聞こえはいいが、やってることって結構野蛮だよなあ……。
「キュウキュウ♪」
『おもちが勝利のダンスしてる』『かわいい。スクショタイム!』『進めー、このままボス戦だー』
まあでも、これも生きるためか。くだらない偽善はやめよう。
命は平等じゃない。それはわかってる。
非情になれとは言わないが、奪う以上、覚悟は持つべきだ。
「切り替えだ。よし、先に進もう」
と、思っていた矢先、何かを踏んづけた。
ゴムみたいな、柔らかいゼリーみたいな。
むにむに、むにむに。
視線を下げると、地面は草っぱら。いや、良くみるとなんだか赤い?
「キュウー!」
突然、鼻をクンクンさせたおもちが近づいてくる。そして、口をあんぐりとあげて赤草を食べようと――。
「や、やめてくださいやめてください。ごめんなさいッごめんなさいぃ!」
次の瞬間、赤草から声が聞こえた。小さな女の子のような声で、なんというか萌え声だ。
『地面から声が……?』『草が喋った!?』『可愛い声してる』『なんだこれ?』
思わず警戒しながら一歩下がって、おもちと御崎に声をかけた。
「御崎、おもち、離れろ!」
「キュウッ!」
「喋る魔物!?」
むにゅりと起き上がると、赤草は徐々に――姿かたちを変えていく。
「ごめんなさい、ごめんなさい。敵意はないんです、違うんです違うんです」
謝罪を繰り返しながら現れたのは、メラメラ燃え盛っているスライムだった。
普通は確か青色だ。何だ……こいつ?
『喋ってる!?』『幼女っぽい声』『燃えてる』『逆に怖い』
「御崎、知ってるか?」
首を横に振る。どうやら知らないらしい。
『初めてみた。スライム?』『亜種っぽい』『殺せ殺せー』
コメントは音声で出るようにしてる。
それに反応したのかスライムが呼応して叫ぶ。
「やめてー! 殺さないでー! 美味しくないよー!」
……怪しいな。
「よしおもち、攻撃だ」
「キュウ!」
「わ、わ、わ、やめてやめてくださいッ お願いします!」
けれどもスライムは、人間の言葉で謝罪を繰り返す。
流石に可哀想なのか、おもちは悲し気な表情を浮かべた。
「だめよ、油断しないで!」
そんなことはお構いなく、御崎はスキルを発動。
スライムが空中に浮き、更に騒ぎ立てる。
『ミサキちゃん容赦ない!』『当然、即殺るべき』『ヤレー!』『可哀想感ある』
「わ、わ、わ、わ、わ、わ、わ、やめてやめてやめてやめて、何でもしますから! ボクは悪いスライムじゃない!」
「どこかで聞いたような台詞だな……」
「阿鳥、人間の言葉を発する魔物は危険だと聞いたことがある。油断しないほうがいい。おもっちゃん、ひとおもいにやっちゃいなさい」
「キュウ……」
なんだか可哀想な気もするが、ついさっき偽善はやめようと思っていたところだ。
仕方ない。これも世のため人の為、というか俺の為。
「すまない……スライム。――おもち、ブレスだ!」
「キュ……キュウー!!!!」
「わー! やめてー! しんじゃうー! しんじゃうよー!」
戸惑いを見せたおもちだったが、鋭い眼光にキュッと戻し、炎のブレスを発射した。
『容赦ないwww』『おもち、非情になれ!』『仕方ない、これが世の中の摂理』
サイクロプスと同様、一直線に放たれた炎はファイアスライムにぶつかって――完全に吸収されてしまう。
炎タイプと言えども、おもちの攻撃はそんな生易しいもんじゃない。
「……嘘だろ?」
「あついよー! あついよー! 撃たれたー!」
しかしスライムは無傷だった。