「海崎、当番代わってくれてありがとな」
寮の談話室のソファーでくつろいでいたときに、寮長の宮城から声をかけられた。
「いえ、大丈夫です。また何かあったら言ってください」
「ありがと、助かるよ」
海崎は寮の掃除などの当番を時々宮城から任される。部活の都合や体調不良などで宮城が決めた当番どおりにいかないことがあるのだ。
掃除は嫌いじゃないし、家事は小学生のころからこなしてきた。寮の誰かがやらねばならない仕事だし、頼まれたら嫌がらずに引き受けたいと思っている。早く寮での生活に馴染んでいきたいし、地味な自分にはそのくらいしかできることはないと思うからだ。
「海崎すごいよな、この前の中間テスト! いきなり学年トップテン入りだろ?」
海崎が談話室で一緒に話をしているのは、なかむーこと中村だ。中村は海崎が学年二百三十八人中、八位だったことを知って、「転校してきたばかりでバケモノか!」とツッコミを入れてきた。以来、中村との距離が縮まった気がする。
東京にいたときは落ちこぼれだったのに、ここでは賢い奴認定されている。そのことに少しだけ複雑な気持ちだ。
「期末のときは勉強教えろよ、お前の部屋に押しかけるからなっ」
「いいよ、一緒にやろう」
中村は気さくでいい奴だ。類は友を呼ぶというから、伊野の友達はいい奴ばかりなのかもしれないなと海崎は思っている。
伊野のおかげで交友関係が広がった。寮でも学校でも話せる友達が増えて、日々が楽しくなった。
中村と話しているのに、さっきから海崎のスマホが鳴りっぱなしだ。さすがに気になって視線をやると、全部、伊野からのメッセージだった。
伊野は本当に毎日メッセージを送ってくる。メッセージをもらえるのは嬉しいが、伊野は忙しいはずなのにどうしてこんなにメッセージを送ってくるんだろうといつも疑問に思っている。
「また伊野だ。しょっちゅう伊野からメッセージが来る。伊野ってマメだよね」
海崎は中村に同意してほしくて言ったのに、「そうかな、普通じゃない?」と返されてしまった。
海崎にとって伊野のメッセージは頻繁に思えたが、友達付き合いのうまい人たちにとってはこのくらい普通の頻度なのかもしれない。
「だって学校でも会うし、寮でも話せるんだからメッセージ送るほどでもないじゃん?」
「だよねぇ……」
不思議だ。あとで言おうとすると忘れてしまうから、メッセージを送ってくるのだろうか。
「伊野といえばさ、明日あいつがどうするか見ものだぜ?」
「明日?」
「明日男子は家庭科があるだろ? うちの学校で恒例の調理実習なんだよ」
この学校では、体育や家庭科などの科目は男女別々で二クラス合同で行っている。明日、海崎のクラスは、男子は家庭科で、女子は体育だ。
「調理実習でクッキー作るじゃん? それを好きな人にあげるってのが、恒例なんだよ」
「えっ! 知らなかった……」
「伊野はモテるからさ、女子がソワソワしてんの。俺もあいつが誰にあげるかめっちゃ気になる」
「うん。気になるね……」
そういえば伊野に好きな人がいるのか聞いたことがない。彼女はいないっぽいのだけは、なんとなく周囲の雰囲気で感じとった。
「伊野が好きになる人ってどんな人なんだろう……」
あんまり伊野と恋愛話をしたことがなかったことに気がついた。でも、好みくらいは聞いてみたいな、と思った。
「あ。ちょうど伊野が来た」
中村が廊下を通りかかった伊野に気がついて伊野を呼ぶ。
「伊野ー! 海崎がお前の好みのタイプ聞きたいってよ!」
「えっ、ちょっ、待っ……!」
中村にデカい声で言われて海崎は慌てる。そんなことを言われたら、伊野のことを気にし過ぎているみたいで恥ずかしい。
「え? 海崎が?」
無視してくれればいいのに、伊野は近寄ってきて「なんでそんなん知りたいの」と笑う。
「た、ただの興味だよ」
「へぇ。じゃあさ、俺も教えるから、海崎も言えよ、好みのタイプ」
「えっ」
そんなことを言う心の準備はできていないのに、伊野は「俺はねぇ……」とさっさと話を始めてしまっている。
でも知りたい。伊野の好みのタイプを。
「俺はね。そうだな……優しい人がいいな。言葉とか態度もそうなんだけど、考え方って言うか、根が優しい人がいい」
「ハイ出た、優しい人ね!」
中村がすかさずツッコミを入れる。
「あとは色白で肌が綺麗な人。目が可愛い子」
「あー、いいね」
「そういう子見ると抱きしめたくなる」
伊野は海崎に視線を向けてきた。全然関係ないのに、寮室で伊野に抱きしめられたときのことを思い出した。そのせいで、あのときのドキドキが戻ってきたみたいに胸が高鳴る。
「海崎は?」
「へっ? な、何っ?」
伊野に名前を呼ばれて海崎はハッと意識を取り戻す。
「またぼんやりしてんの? 海崎らしいな」
案の定、伊野に笑われる。伊野からすると、海崎はすっかりいつもぼんやりしてるキャラらしい。
「ほら次、海崎の好みのタイプ、教えてよ」
「えっ? 俺のっ?」
「そうだよ。知りたい。全然わかんねぇんだもん」
どうしよう。恋愛とは無縁過ぎて、自分の好みのタイプなんて考えたこともない。
「い、一緒にいて楽な人かな……」
海崎にとって人間関係を構築するのは難しく、その最たるものが恋人を作ることなんじゃないだろうかと思う。一緒にいてガチガチに緊張してしまう相手は無理だろう。そんなの疲れるだけだ。
そうじゃなくて、出来損ないの自分をありのまま認めてくれるような人がいい。例えるなら伊野のような——。
「あー、なる! 海崎は癒し系女子ね!」
中村が「俺も好きだな、癒し系女子」と相槌を打ってきた。
「海崎は誰にあげるの? 明日」
「え……」
中村に聞かれて気がついた。明日、海崎も調理実習をする。ということは誰かに手作りクッキーをあげる立場だ。
「調理実習のクッキーをあげると両想いになれるってジンクスがある。海崎は誰にあげんのかなぁ。気になるなー」
「な、なんだよ」
中村の追及するような視線に海崎はたじろぐ。
「やっぱ上原?」
「え! 違うっ、なんでその名前出すんだよっ」
海崎は慌てて中村の口を塞ぐ。談話室には他の生徒もいる。間違って聞かれたら大変なことになる。
上原と同じ委員をやるようになってから、なぜか学校で「あのふたりはいい感じ」と噂をされるようになってしまった。事実無根なのに噂ばかり広がってしまい、海崎は本当に参っている。
「そういえば上原って癒し系女子だな」
「やめろって!」
これは義理でも上原にクッキーをあげちゃダメなやつだ。でも聞いておいてよかった。知らずにあげたら大問題になるところだった。
「なかむーは? 好みのタイプはっ?」
「教えなーい」
「ずるいぞ、明日誰にあげるんだよっ」
「知らねぇ」
「おいっ! 人に話させといてそれはないだろ」
恋愛の話なんて恥ずかしいのに、中村だけ話さないのはずるい。海崎が食ってかかると中村はソファーから立ち上がって逃げた。
「あっ、こらっ。伊野も……っ」
伊野にも加勢してもらおうと思って振り返ると、伊野はなぜか「捕まえたっ」と海崎の身体を両腕でホールドしてきた。
「えっ? なんでっ?」
どう考えてもおかしい。伊野に捕まえてほしいのは、逃げた中村なのに。
「なかむーは、いいんだって」
「はぁっ? なんでだよ、とにかく離せって」
全然納得がいかない。海崎は伊野の腕から逃れようとジタバタする。
「だーめ。海崎は俺が捕まえた」
伊野は全然離してくれない。そのあいだに中村は「サンキュー伊野」と言って逃げてしまった。
「もう! 伊野のせいでなかむーに逃げられたじゃないか!」
伊野の胸板をバシッと叩く。伊野は「ごめんごめん」と言って、やっと解放してくれた。
伊野をポカポカ叩いてやろうかと思っていたとき、伊野が海崎の耳朶に唇を寄せてくる。
「海崎」
耳元で名前を囁かれる。伊野の声はすごく好きだ。爽やかで、発音がクリアで、優しくて男らしくて、その全部の要素が好みだ。
「許せ。明日教えてやるから」
伊野はそう囁いたあと、「今日は早く寝よ」と両腕を上げて身体を伸ばしながら談話室を出て行った。
一方の海崎は、まだ気持ちが落ち着かない。
こうやって時々、伊野に抱きしめられることには慣れてきたはずだった。あの声で名前を呼ばれることもよくあることだ。
『海崎は俺が捕まえた』
さっきの伊野の言葉は、じゃれあってるときの言葉で、伊野にとっては何の意味もないだろう。でも言われた瞬間、胸が躍った。伊野がずっとそばにいてくれるような気持ちになったからだ。
なんで、こんな気持ちになるのだろう。
自分で自分のことがわからない。伊野に近づかれるたびに感じる、この胸の高鳴りはなんなのだろう。友情、思いやり、優越感。どんな言葉を思い浮かべても、しっくりこない。
結果的に話がなぁなぁになってしまったので、聞きそびれてしまったが、明日、伊野はどうするのだろう。
伊野は学校で大人気だ。きっと明日、伊野の手作りクッキーを女子たちが虎視眈々と狙っているに違いない。
そんな伊野の心を射止めて、クッキーをもらえる女子が羨ましいと思ったのは、きっと何かの間違いだ。
寮の談話室のソファーでくつろいでいたときに、寮長の宮城から声をかけられた。
「いえ、大丈夫です。また何かあったら言ってください」
「ありがと、助かるよ」
海崎は寮の掃除などの当番を時々宮城から任される。部活の都合や体調不良などで宮城が決めた当番どおりにいかないことがあるのだ。
掃除は嫌いじゃないし、家事は小学生のころからこなしてきた。寮の誰かがやらねばならない仕事だし、頼まれたら嫌がらずに引き受けたいと思っている。早く寮での生活に馴染んでいきたいし、地味な自分にはそのくらいしかできることはないと思うからだ。
「海崎すごいよな、この前の中間テスト! いきなり学年トップテン入りだろ?」
海崎が談話室で一緒に話をしているのは、なかむーこと中村だ。中村は海崎が学年二百三十八人中、八位だったことを知って、「転校してきたばかりでバケモノか!」とツッコミを入れてきた。以来、中村との距離が縮まった気がする。
東京にいたときは落ちこぼれだったのに、ここでは賢い奴認定されている。そのことに少しだけ複雑な気持ちだ。
「期末のときは勉強教えろよ、お前の部屋に押しかけるからなっ」
「いいよ、一緒にやろう」
中村は気さくでいい奴だ。類は友を呼ぶというから、伊野の友達はいい奴ばかりなのかもしれないなと海崎は思っている。
伊野のおかげで交友関係が広がった。寮でも学校でも話せる友達が増えて、日々が楽しくなった。
中村と話しているのに、さっきから海崎のスマホが鳴りっぱなしだ。さすがに気になって視線をやると、全部、伊野からのメッセージだった。
伊野は本当に毎日メッセージを送ってくる。メッセージをもらえるのは嬉しいが、伊野は忙しいはずなのにどうしてこんなにメッセージを送ってくるんだろうといつも疑問に思っている。
「また伊野だ。しょっちゅう伊野からメッセージが来る。伊野ってマメだよね」
海崎は中村に同意してほしくて言ったのに、「そうかな、普通じゃない?」と返されてしまった。
海崎にとって伊野のメッセージは頻繁に思えたが、友達付き合いのうまい人たちにとってはこのくらい普通の頻度なのかもしれない。
「だって学校でも会うし、寮でも話せるんだからメッセージ送るほどでもないじゃん?」
「だよねぇ……」
不思議だ。あとで言おうとすると忘れてしまうから、メッセージを送ってくるのだろうか。
「伊野といえばさ、明日あいつがどうするか見ものだぜ?」
「明日?」
「明日男子は家庭科があるだろ? うちの学校で恒例の調理実習なんだよ」
この学校では、体育や家庭科などの科目は男女別々で二クラス合同で行っている。明日、海崎のクラスは、男子は家庭科で、女子は体育だ。
「調理実習でクッキー作るじゃん? それを好きな人にあげるってのが、恒例なんだよ」
「えっ! 知らなかった……」
「伊野はモテるからさ、女子がソワソワしてんの。俺もあいつが誰にあげるかめっちゃ気になる」
「うん。気になるね……」
そういえば伊野に好きな人がいるのか聞いたことがない。彼女はいないっぽいのだけは、なんとなく周囲の雰囲気で感じとった。
「伊野が好きになる人ってどんな人なんだろう……」
あんまり伊野と恋愛話をしたことがなかったことに気がついた。でも、好みくらいは聞いてみたいな、と思った。
「あ。ちょうど伊野が来た」
中村が廊下を通りかかった伊野に気がついて伊野を呼ぶ。
「伊野ー! 海崎がお前の好みのタイプ聞きたいってよ!」
「えっ、ちょっ、待っ……!」
中村にデカい声で言われて海崎は慌てる。そんなことを言われたら、伊野のことを気にし過ぎているみたいで恥ずかしい。
「え? 海崎が?」
無視してくれればいいのに、伊野は近寄ってきて「なんでそんなん知りたいの」と笑う。
「た、ただの興味だよ」
「へぇ。じゃあさ、俺も教えるから、海崎も言えよ、好みのタイプ」
「えっ」
そんなことを言う心の準備はできていないのに、伊野は「俺はねぇ……」とさっさと話を始めてしまっている。
でも知りたい。伊野の好みのタイプを。
「俺はね。そうだな……優しい人がいいな。言葉とか態度もそうなんだけど、考え方って言うか、根が優しい人がいい」
「ハイ出た、優しい人ね!」
中村がすかさずツッコミを入れる。
「あとは色白で肌が綺麗な人。目が可愛い子」
「あー、いいね」
「そういう子見ると抱きしめたくなる」
伊野は海崎に視線を向けてきた。全然関係ないのに、寮室で伊野に抱きしめられたときのことを思い出した。そのせいで、あのときのドキドキが戻ってきたみたいに胸が高鳴る。
「海崎は?」
「へっ? な、何っ?」
伊野に名前を呼ばれて海崎はハッと意識を取り戻す。
「またぼんやりしてんの? 海崎らしいな」
案の定、伊野に笑われる。伊野からすると、海崎はすっかりいつもぼんやりしてるキャラらしい。
「ほら次、海崎の好みのタイプ、教えてよ」
「えっ? 俺のっ?」
「そうだよ。知りたい。全然わかんねぇんだもん」
どうしよう。恋愛とは無縁過ぎて、自分の好みのタイプなんて考えたこともない。
「い、一緒にいて楽な人かな……」
海崎にとって人間関係を構築するのは難しく、その最たるものが恋人を作ることなんじゃないだろうかと思う。一緒にいてガチガチに緊張してしまう相手は無理だろう。そんなの疲れるだけだ。
そうじゃなくて、出来損ないの自分をありのまま認めてくれるような人がいい。例えるなら伊野のような——。
「あー、なる! 海崎は癒し系女子ね!」
中村が「俺も好きだな、癒し系女子」と相槌を打ってきた。
「海崎は誰にあげるの? 明日」
「え……」
中村に聞かれて気がついた。明日、海崎も調理実習をする。ということは誰かに手作りクッキーをあげる立場だ。
「調理実習のクッキーをあげると両想いになれるってジンクスがある。海崎は誰にあげんのかなぁ。気になるなー」
「な、なんだよ」
中村の追及するような視線に海崎はたじろぐ。
「やっぱ上原?」
「え! 違うっ、なんでその名前出すんだよっ」
海崎は慌てて中村の口を塞ぐ。談話室には他の生徒もいる。間違って聞かれたら大変なことになる。
上原と同じ委員をやるようになってから、なぜか学校で「あのふたりはいい感じ」と噂をされるようになってしまった。事実無根なのに噂ばかり広がってしまい、海崎は本当に参っている。
「そういえば上原って癒し系女子だな」
「やめろって!」
これは義理でも上原にクッキーをあげちゃダメなやつだ。でも聞いておいてよかった。知らずにあげたら大問題になるところだった。
「なかむーは? 好みのタイプはっ?」
「教えなーい」
「ずるいぞ、明日誰にあげるんだよっ」
「知らねぇ」
「おいっ! 人に話させといてそれはないだろ」
恋愛の話なんて恥ずかしいのに、中村だけ話さないのはずるい。海崎が食ってかかると中村はソファーから立ち上がって逃げた。
「あっ、こらっ。伊野も……っ」
伊野にも加勢してもらおうと思って振り返ると、伊野はなぜか「捕まえたっ」と海崎の身体を両腕でホールドしてきた。
「えっ? なんでっ?」
どう考えてもおかしい。伊野に捕まえてほしいのは、逃げた中村なのに。
「なかむーは、いいんだって」
「はぁっ? なんでだよ、とにかく離せって」
全然納得がいかない。海崎は伊野の腕から逃れようとジタバタする。
「だーめ。海崎は俺が捕まえた」
伊野は全然離してくれない。そのあいだに中村は「サンキュー伊野」と言って逃げてしまった。
「もう! 伊野のせいでなかむーに逃げられたじゃないか!」
伊野の胸板をバシッと叩く。伊野は「ごめんごめん」と言って、やっと解放してくれた。
伊野をポカポカ叩いてやろうかと思っていたとき、伊野が海崎の耳朶に唇を寄せてくる。
「海崎」
耳元で名前を囁かれる。伊野の声はすごく好きだ。爽やかで、発音がクリアで、優しくて男らしくて、その全部の要素が好みだ。
「許せ。明日教えてやるから」
伊野はそう囁いたあと、「今日は早く寝よ」と両腕を上げて身体を伸ばしながら談話室を出て行った。
一方の海崎は、まだ気持ちが落ち着かない。
こうやって時々、伊野に抱きしめられることには慣れてきたはずだった。あの声で名前を呼ばれることもよくあることだ。
『海崎は俺が捕まえた』
さっきの伊野の言葉は、じゃれあってるときの言葉で、伊野にとっては何の意味もないだろう。でも言われた瞬間、胸が躍った。伊野がずっとそばにいてくれるような気持ちになったからだ。
なんで、こんな気持ちになるのだろう。
自分で自分のことがわからない。伊野に近づかれるたびに感じる、この胸の高鳴りはなんなのだろう。友情、思いやり、優越感。どんな言葉を思い浮かべても、しっくりこない。
結果的に話がなぁなぁになってしまったので、聞きそびれてしまったが、明日、伊野はどうするのだろう。
伊野は学校で大人気だ。きっと明日、伊野の手作りクッキーを女子たちが虎視眈々と狙っているに違いない。
そんな伊野の心を射止めて、クッキーをもらえる女子が羨ましいと思ったのは、きっと何かの間違いだ。