今日は執行部の定例会がある日だ。企画書のアドバイスはパスだと七威に伝えそびれていた。そういえばお互いの連絡先知らないな。園田と木村さんとは七威も交換してたけど。
毎日のように会っていたせいか必要性を感じなかった。教えて欲しいとリクエストもされてない。どうせまた会える。七威もきっと同じ考えなんだろう。気がかりなのは、僕がいない間に工藤先輩と鉢合わせた時だ。
七威のクラスに行ってみようか。でも冷やかされそうで気が引ける。公開告白の余波が若干残ってるんだよな。だらだら考えながら廊下を歩いていると、七威に出くわした。
「結都ちゃん、お疲れー。どうしたの。すっごく真剣な顔してたよ」
なんてタイムリーなんだ。
「七威、ちょうど良かった。謝ろうと思ってたんだ。昨日強引に誘って迷惑かけただろ」
「アクアラッシュのこと?」
僕は頷いた。場の雰囲気を壊さないようOKしたのであれば、早めにキャンセルしたほうがいい。もちろん僕も行かない。
「結都ちゃんは……園田さんとふたりで行きたかった? だったらごめん。気が利かなくて」
なんか違う方向に話がいってる。僕は慌てて訂正した。
「園田とはそういうんじゃないって前も言ったよね」
「じゃあ良かった。四人で行こ」
「七威がそれでいいなら、いいけど」
「えーだったら本音言うよ?」
「なに急に」
実は文句がたくさんあるのかと身構えたが、七威が口にしたのは正反対の言葉だった。
「俺は結都ちゃんとふたりで出かけたい」
どういうわけか、七威はこういう時、ものすごく大人びた目をする。呑まれそうになる。雰囲気に。七威の持つ独特の世界に。
『性別なんてとっくに飛び越えて来てんだよ、むこうは』
不意に工藤先輩の言葉を思い出した。
僕のこと、友達として好きなの。恋愛対象として好きなの。告白はただのノリだよな、本気じゃないだろ? どう転んでも、七威が僕を好きになる理由が見つからずモヤモヤする。
流れ的に、一緒に出かけるの楽しみだよ。それくらい軽く返せばいいのに、声が出なかった。
「なんてね。週末待ち遠しー」
七威が笑う。なぜか申し訳なくて、胸が痛くなった。同時にどうしようもなく意識させられる。七威のことをもっと知ったら、僕は変わるだろうか。
逆に七威が僕の負の部分を知ったらどうだろう。他人に抱く印象は、風が吹けば変わる。良くも悪くも。経験上、それくらい適当なものだと思ってる。
「七威って魚好きなの?」
「肉のほうが好き」
「牛も豚も水族館にいないよ」
「それな」
七威が吹き出す。食べ物の好みを訊いてるんじゃないのに、七威がわざとズレた回答するから冷静に突っ込んでしまった。
「そうだ、連絡先教えてよ。俺、明日予定があって企画書持ってけないんだ。そういうの、お互いのクラス行き来して伝えるほどのものでもないじゃん」
普通科と情報科は同じ階でもレイアウトのせいで教室が離れている。僕と七威のクラスは位置的に端と端で遠いのだ。
「僕も定例会があるって知らせたかったんだ」
「でしょでしょ。これID。いつもは五万のところ今日はなんとゼロ円でご提供」
「普段どんだけ高いんだよ」
「拡散禁止ね」と冗談まじりに渡されたメモには、メッセアプリのIDと電話番号が書いてあった。用意してくれてたんだ。
「ありがと。七威の予定って?」
他意はなかった。無意識に訊ねた。七威の顔がわずかにこわばった。
「あ、ごめん、立ち入ったこと聞いたね」
「いや、そんなんじゃなくて。昔の知り合いに会うんだ」
いつもと違って歯切れの悪い言い方だった。なぜかそれが、引っかかった。昔の知り合いなら中学校の友達? もしかして橘先輩に会うんじゃないか。根拠もなくそう思った。
なんだろう、この感じ。心が重苦しい。すごく、狭量な気がする。七威が誰と会ったっていいじゃないか。僕の知らない相手はいくらでもいる。クラスメイトすら知らないんだ。
どんな中学時代を過ごしたのか、橘先輩や工藤先輩とどんな関係なのか。気にしたって、僕は過去に関われない。
それが嫌なのか? 関わりたいのか? まさか寂しい? なんで? わからない。
「僕、職員室行くから。ここで」
「待って……結都ちゃん」
七威の体が僕のほうへ傾いた。とっさに両腕で肩を支える。
「ちょ、どうした?」
両手に七威の体の重みが伝わってきた。わずかに震えてる。元気な姿しか知らないから焦る。
「具合悪い?」
「……かも」
「なに? 聞こえな」
「キスしてくれたら治るかも……」
は? 僕は一瞬遅れて意味を解した。
「こんなときに冗談言うな」
遊ばれたのだと気づいて手を離すと、支えをなくした七威がさらに倒れ込んできた。
「七威! ほんとに具合悪いのか」
「……ちょっとヤバい」
「保健室行こう。定例会終わったら様子見に行くから」
「ん……」
僕は迎えに行く約束をして、七威を保健室へ送り届けた。
定例会のあいだ、ずっと七威のことが気になって集中できなかった。ああもう。なんであいつごときにソワソワしなきゃならないんだ。お陰で打合せの半分以上、頭に入ってこなかった。あとで議事録読み返さないと。
「あら沓沢くん、ご苦労さま。彼、まだ寝てるわよ」
打合せを終え急いで保健室へ戻ると、七威はすやすやとベッドで眠っていた。養護教諭の見立てでは「寝不足か貧血」らしかった。なんだよ寝不足って。夜更かしか、遊び歩いてるのか?
貧血なら栄養のあるもの食べなきゃだし。ほうれん草以外に鉄分補給できるものあったかな。七威の顔を見下ろしながら考えていると、下校時刻を知らせるチャイムが鳴った。そろそろ起こそうか。
「タクシー呼ぼうと思ってるのよ」
「いえ、僕が送って行くので大丈夫です」
「あらそう? 助かるわ。お願いね」
僕はベッドの傍らに立ち、名前を呼んだ。熟睡してるようで起きない。今度は肩を揺らしてみる。
「七威、帰る時間」
数秒して、七威が目を開いた。良かった、顔色は悪いけど普通に生きてる。
「結都ちゃん……本当に迎えに来てくれたんだ」
「さすがに心配だし。起きれる? 一緒に帰ろう」
「やった、嬉しい」
七威がぱっと顔を輝かせた。笑顔を出し惜しみしないっていうか。屈託がなくて、でもどこか儚げで。時々まぶしく映る。
「どうしたの?」
「共学なら女の子がこぞって看病してくれただろうと思って」
「俺は結都ちゃんひとりで充分だよ」
真顔で言うな。
「ほら、上着。ネクタイは?」
「ポケット」
言いながら七威がふっと笑った。
「結都ちゃん優しいね。毎日保健室来ようかな」
「あほ。お迎えは今日だけだ幼稚園児」
無邪気な視線に心の奥を見透かされそうで目をそらした。七威がまぶしいのは、僕にないものを持っているからだ。たぶん。
*
夕食後、部屋でFFAの曲をかけ数学の宿題を片づけていた。
一問解いて、あらためてシャーペンを眺める。
――結都ちゃんの髪の色。
なんだかなぁ。意味わかんないよな。あれか、推しと同じ色のものを集める心理か。僕が推しって……自分で言ってて恥ずかしくなってきた。
僕はスマホのフォトアプリを開いた。体育祭で撮った写真が並んでる。数枚目に、七威の写真もあった。借り人競争で指揮台に上がった時、クラスメイトが撮ったものだ。
公開告白の件はさておき、七威の英語は綺麗で聞き取りやすかった。どこで身に着けたんだろう。僕も多少話せるけどカタコトだ。七威ほど流暢なら外国でも通用するよな。
「なに見てるの?」
「わあ、英奈! 勝手に入って来るなよ」
「お姉さまとお呼び。勉強なら一万円でカテキョーしてあげるわよ」
風呂上がりの英奈が、アイスをガリガリかじりながら部屋に入ってきた。飼い猫のクロもドアの隙間から顔を出す。
「カテキョーなんていらないよ。守銭奴が」
「うん、お金大好きぃ。あ、ねえちょっとこの子だれ? 名前は? 同じ学年?」
無許可でスマホを覗いた挙句、さっそくイケメンに食いつく姉。
「情報科の青山。同級生」
「ひゃー、かっこよ。派手に染めてるわねぇ」
「髪色は自由だし」
「ねえ、工藤先輩は?」
英奈は工藤先輩のファンだ。僕はスマホを渡した。満足させるまでうるさいので従うしかない。
「どうぞ」
「もう、眼鏡男子、最っ高……!」
英奈は二十歳の大学生だ。アナログやデジタルのイラストを描いては、せっせとコンテストに応募している。弟の僕が言うのもなんだが、上手いと思う。困ったことに、作品に向かう集中力が途切れると、こうして人の邪魔をしてくるのだ。
「工藤先輩て彼女いるの?」
「立候補する気?」
「年下は観賞用よ。どんな子が好みなのかなって」
「好きな人がいるらしい。それ以外の情報はない」
「つまんなー」
「どうでもいいけど、早く出てって。宿題の邪魔」
「私のスマホに写真転送しといてね。アデュー」
ドアが閉まった途端、静かになった。世の姉はみんなこうなのか。弟の人権とは。英奈の頭の中には1ヘクタールの花畑が広がってるんだ。
「能天気って、幸せだよな」
クロがベッドの上で毛づくろいしながら、にゃあんと鳴いた。
毎日のように会っていたせいか必要性を感じなかった。教えて欲しいとリクエストもされてない。どうせまた会える。七威もきっと同じ考えなんだろう。気がかりなのは、僕がいない間に工藤先輩と鉢合わせた時だ。
七威のクラスに行ってみようか。でも冷やかされそうで気が引ける。公開告白の余波が若干残ってるんだよな。だらだら考えながら廊下を歩いていると、七威に出くわした。
「結都ちゃん、お疲れー。どうしたの。すっごく真剣な顔してたよ」
なんてタイムリーなんだ。
「七威、ちょうど良かった。謝ろうと思ってたんだ。昨日強引に誘って迷惑かけただろ」
「アクアラッシュのこと?」
僕は頷いた。場の雰囲気を壊さないようOKしたのであれば、早めにキャンセルしたほうがいい。もちろん僕も行かない。
「結都ちゃんは……園田さんとふたりで行きたかった? だったらごめん。気が利かなくて」
なんか違う方向に話がいってる。僕は慌てて訂正した。
「園田とはそういうんじゃないって前も言ったよね」
「じゃあ良かった。四人で行こ」
「七威がそれでいいなら、いいけど」
「えーだったら本音言うよ?」
「なに急に」
実は文句がたくさんあるのかと身構えたが、七威が口にしたのは正反対の言葉だった。
「俺は結都ちゃんとふたりで出かけたい」
どういうわけか、七威はこういう時、ものすごく大人びた目をする。呑まれそうになる。雰囲気に。七威の持つ独特の世界に。
『性別なんてとっくに飛び越えて来てんだよ、むこうは』
不意に工藤先輩の言葉を思い出した。
僕のこと、友達として好きなの。恋愛対象として好きなの。告白はただのノリだよな、本気じゃないだろ? どう転んでも、七威が僕を好きになる理由が見つからずモヤモヤする。
流れ的に、一緒に出かけるの楽しみだよ。それくらい軽く返せばいいのに、声が出なかった。
「なんてね。週末待ち遠しー」
七威が笑う。なぜか申し訳なくて、胸が痛くなった。同時にどうしようもなく意識させられる。七威のことをもっと知ったら、僕は変わるだろうか。
逆に七威が僕の負の部分を知ったらどうだろう。他人に抱く印象は、風が吹けば変わる。良くも悪くも。経験上、それくらい適当なものだと思ってる。
「七威って魚好きなの?」
「肉のほうが好き」
「牛も豚も水族館にいないよ」
「それな」
七威が吹き出す。食べ物の好みを訊いてるんじゃないのに、七威がわざとズレた回答するから冷静に突っ込んでしまった。
「そうだ、連絡先教えてよ。俺、明日予定があって企画書持ってけないんだ。そういうの、お互いのクラス行き来して伝えるほどのものでもないじゃん」
普通科と情報科は同じ階でもレイアウトのせいで教室が離れている。僕と七威のクラスは位置的に端と端で遠いのだ。
「僕も定例会があるって知らせたかったんだ」
「でしょでしょ。これID。いつもは五万のところ今日はなんとゼロ円でご提供」
「普段どんだけ高いんだよ」
「拡散禁止ね」と冗談まじりに渡されたメモには、メッセアプリのIDと電話番号が書いてあった。用意してくれてたんだ。
「ありがと。七威の予定って?」
他意はなかった。無意識に訊ねた。七威の顔がわずかにこわばった。
「あ、ごめん、立ち入ったこと聞いたね」
「いや、そんなんじゃなくて。昔の知り合いに会うんだ」
いつもと違って歯切れの悪い言い方だった。なぜかそれが、引っかかった。昔の知り合いなら中学校の友達? もしかして橘先輩に会うんじゃないか。根拠もなくそう思った。
なんだろう、この感じ。心が重苦しい。すごく、狭量な気がする。七威が誰と会ったっていいじゃないか。僕の知らない相手はいくらでもいる。クラスメイトすら知らないんだ。
どんな中学時代を過ごしたのか、橘先輩や工藤先輩とどんな関係なのか。気にしたって、僕は過去に関われない。
それが嫌なのか? 関わりたいのか? まさか寂しい? なんで? わからない。
「僕、職員室行くから。ここで」
「待って……結都ちゃん」
七威の体が僕のほうへ傾いた。とっさに両腕で肩を支える。
「ちょ、どうした?」
両手に七威の体の重みが伝わってきた。わずかに震えてる。元気な姿しか知らないから焦る。
「具合悪い?」
「……かも」
「なに? 聞こえな」
「キスしてくれたら治るかも……」
は? 僕は一瞬遅れて意味を解した。
「こんなときに冗談言うな」
遊ばれたのだと気づいて手を離すと、支えをなくした七威がさらに倒れ込んできた。
「七威! ほんとに具合悪いのか」
「……ちょっとヤバい」
「保健室行こう。定例会終わったら様子見に行くから」
「ん……」
僕は迎えに行く約束をして、七威を保健室へ送り届けた。
定例会のあいだ、ずっと七威のことが気になって集中できなかった。ああもう。なんであいつごときにソワソワしなきゃならないんだ。お陰で打合せの半分以上、頭に入ってこなかった。あとで議事録読み返さないと。
「あら沓沢くん、ご苦労さま。彼、まだ寝てるわよ」
打合せを終え急いで保健室へ戻ると、七威はすやすやとベッドで眠っていた。養護教諭の見立てでは「寝不足か貧血」らしかった。なんだよ寝不足って。夜更かしか、遊び歩いてるのか?
貧血なら栄養のあるもの食べなきゃだし。ほうれん草以外に鉄分補給できるものあったかな。七威の顔を見下ろしながら考えていると、下校時刻を知らせるチャイムが鳴った。そろそろ起こそうか。
「タクシー呼ぼうと思ってるのよ」
「いえ、僕が送って行くので大丈夫です」
「あらそう? 助かるわ。お願いね」
僕はベッドの傍らに立ち、名前を呼んだ。熟睡してるようで起きない。今度は肩を揺らしてみる。
「七威、帰る時間」
数秒して、七威が目を開いた。良かった、顔色は悪いけど普通に生きてる。
「結都ちゃん……本当に迎えに来てくれたんだ」
「さすがに心配だし。起きれる? 一緒に帰ろう」
「やった、嬉しい」
七威がぱっと顔を輝かせた。笑顔を出し惜しみしないっていうか。屈託がなくて、でもどこか儚げで。時々まぶしく映る。
「どうしたの?」
「共学なら女の子がこぞって看病してくれただろうと思って」
「俺は結都ちゃんひとりで充分だよ」
真顔で言うな。
「ほら、上着。ネクタイは?」
「ポケット」
言いながら七威がふっと笑った。
「結都ちゃん優しいね。毎日保健室来ようかな」
「あほ。お迎えは今日だけだ幼稚園児」
無邪気な視線に心の奥を見透かされそうで目をそらした。七威がまぶしいのは、僕にないものを持っているからだ。たぶん。
*
夕食後、部屋でFFAの曲をかけ数学の宿題を片づけていた。
一問解いて、あらためてシャーペンを眺める。
――結都ちゃんの髪の色。
なんだかなぁ。意味わかんないよな。あれか、推しと同じ色のものを集める心理か。僕が推しって……自分で言ってて恥ずかしくなってきた。
僕はスマホのフォトアプリを開いた。体育祭で撮った写真が並んでる。数枚目に、七威の写真もあった。借り人競争で指揮台に上がった時、クラスメイトが撮ったものだ。
公開告白の件はさておき、七威の英語は綺麗で聞き取りやすかった。どこで身に着けたんだろう。僕も多少話せるけどカタコトだ。七威ほど流暢なら外国でも通用するよな。
「なに見てるの?」
「わあ、英奈! 勝手に入って来るなよ」
「お姉さまとお呼び。勉強なら一万円でカテキョーしてあげるわよ」
風呂上がりの英奈が、アイスをガリガリかじりながら部屋に入ってきた。飼い猫のクロもドアの隙間から顔を出す。
「カテキョーなんていらないよ。守銭奴が」
「うん、お金大好きぃ。あ、ねえちょっとこの子だれ? 名前は? 同じ学年?」
無許可でスマホを覗いた挙句、さっそくイケメンに食いつく姉。
「情報科の青山。同級生」
「ひゃー、かっこよ。派手に染めてるわねぇ」
「髪色は自由だし」
「ねえ、工藤先輩は?」
英奈は工藤先輩のファンだ。僕はスマホを渡した。満足させるまでうるさいので従うしかない。
「どうぞ」
「もう、眼鏡男子、最っ高……!」
英奈は二十歳の大学生だ。アナログやデジタルのイラストを描いては、せっせとコンテストに応募している。弟の僕が言うのもなんだが、上手いと思う。困ったことに、作品に向かう集中力が途切れると、こうして人の邪魔をしてくるのだ。
「工藤先輩て彼女いるの?」
「立候補する気?」
「年下は観賞用よ。どんな子が好みなのかなって」
「好きな人がいるらしい。それ以外の情報はない」
「つまんなー」
「どうでもいいけど、早く出てって。宿題の邪魔」
「私のスマホに写真転送しといてね。アデュー」
ドアが閉まった途端、静かになった。世の姉はみんなこうなのか。弟の人権とは。英奈の頭の中には1ヘクタールの花畑が広がってるんだ。
「能天気って、幸せだよな」
クロがベッドの上で毛づくろいしながら、にゃあんと鳴いた。