「そ、そういやお前…彼女どうしたんだよ…」

「あぁ、別れた」

「えっ?」

「何かさ、女とかもういいやって」


悠真に彼女が出来た時、正直ショックだった。

だけどそのせいで俺たちの友達付き合いが疎かになる事もなかったし、悠真が幸せならそれで良いと思ってたけど、でもやっぱりどっか苦しくて…

だから別れてくれたのは正直嬉しいけど、それで俺に有利に働くわけでもないから、少し皮肉を込めた言葉を悠真に投げかけてみた。


「へぇ…あんなに好き好き言ってたのに?」

「うーん。けど俺、凜のが好きだし」


コーヒーを口に含んだタイミングでとんでもない事言い出すから、思わず口に含んだコーヒーを思いっきり吹き出した。


「おぉいっ!きったねぇな、何してんだよぉ」

「お、お前が変な事言うからだろっっ////」

「変な事なんて言ったか?」

「んぅ…///」


悠真にそんな気がない事くらいわかってる…
なのに、そういう言葉を敏感に感じとってしまう自分が恥ずかしくてたまらない。


「そういや凜さ、なんで彼女作んなかったの?告られたりしてたよな?」

「別に…興味ねぇし」

「ふぅん…」


あまり深く掘り下げないで欲しくて、俯き視線を逸らすと沈黙の時間が続く。

暫く何も言ってこない悠真をチラッと横目で確認すると、不思議そうな顔でじっと見つめくるから慌ててまた逸らした。


「好きなやつとかも?いなかったの?」

「…っ、いなかった訳じゃ…ないけど…」

「えっ?だれだれ?教えろよぉ!俺の知ってるやつ!?」

「…っ、うっせぇよっっ///」

「ふはっ!お前顔真っ赤じゃんっ」


じゃれ合うように肩を組まれ、顔を寄せてくる悠真…
何もかもお前のせいだろ?

3年間ずっと俺の隣で嬉しそうに笑うお前を見てて、優しい声に心が揺れて。

ずっと我慢してたのに、今更『お前の事が好きでした』なんて…言えるわけねぇだろ。

しつこいくらいに絡んでくる悠真を振り払って、それでもくっついてくる悠真に悪い気なんかするはずもなくて、肩を組まれたままあの坂道に辿り着く。


「あーあ。何だかんだ言っても、もうすぐ卒業だな」

「そうだな」

「だからさ?俺は、この残り少ない貴重な高校生活をだな!女なんかより凜と過ごす事を選んだ訳よっ!わかる?」

「…っ、全っぜんわっかんねぇっ////」


あぁ、俺はなんて天邪鬼なんだ…

あんなに彼女が出来たと舞い上がってた悠真が、俺を選んで隣にいてくれてるのに素直に喜ぶ事さえ出来ない。

3月に入れば卒業まではもうあとわずか。

思い出を語りながら2人で歩く見慣れたこの道も、後もう少しで終わりなのに…

俺のこの想いが悠真に届く事は…多分

一生ない―――