ある日の放課後。
悠真は彼女に呼び出されたらしく、今日は悟と2人きりで暇を持て余していた。


「凜ちゃん?今日何して遊ぶ?」

「んーそうだなぁ…マックでも行く?」

「いくいくぅ~♡」

「お前何でもノッてくるよな」

「うんっ!だって凜ちゃんと一緒ならなんでも楽しいんだもんっ」

「まぁ、確かに…俺も悟といると楽しいけどさ」


楽しいのは嘘じゃない。
俺の話にいつも乗ってくれて楽しませてくれる悟の事が好きだ。

でもそれは親友として…
あいつを思う感情とは違う。


「…けど凜ちゃん、悠ちゃん居ないと寂しい?」

「はっ!?何言ってんだよっ…べ、別に寂しくなんか…っ///」

「そ…?ならいいけどさ…」


俺の気持ちを見透かしてるかのようにそう呟いた悟は少し寂しげで、何となく微妙な空気になったのを察して俺は慌てて話題を変えてマックへと急いだ。

そして向かい合わせで座ると、悟はじっと俺の顔を見つめながらジュースを飲み続ける。

気まずくて目をそらそうとすると、テーブルに置いてた手を急に掴まれてドキッとする。

すると悟は、真剣な眼差しでとんでもないことを言い出した。


「俺さ、凜ちゃんの事…好き…」

「…っ!?なんだよ…っ、急にっ…」


くりんくりんの大きな目が真剣な眼差しに変わると冗談ではない事が伺える。

正直…好かれているという自覚はあった。

だけど悟のその【好き】は俺がアイツに抱く【好き】と同じなのかどうかは分からない…

だから俺は、余計に茶化す事も掴まれている手を無下に離す事も出来ず、どうしようかと返答に迷っていると悟の表情が少しだけ和らいだ。


「俺ね、凜ちゃんの事好きなの。卒業する前に言いたくてさ…俺と…付き合ってくれない?」


俺と同じ…【好き】?

でも俺はその【好き】をアイツに伝える勇気もないし、伝える気もない。

だからと言ってその【好き】を悟に向ける事は出来なくて、断る理由をどうにか模索する。


「悟、あの…っ、ごめんっ。俺…他に好きな人がいて…」

「…そっか、わかった!じゃあ俺、応援するっ!」

「え…っ、いいよ…そんな…」

「だって俺ら友達だろ?」

「うん、けど…っ」

「だって俺…振られても凜ちゃんの事好きだからさっ!」

「悟…」


断ったのにも関わらず、いつもと変わらない明るさで逆に俺が励まされる。

ある意味で俺は悟のその天真爛漫さが羨ましい。

俺も…こんな風にあいつに想いを伝える事が出来きたなら…

悟を見てると俺にも出来るかも…
なんて勘違いを起こしそうになるけど、俺にはそもそもそんな勇気はないし、当たって砕けてしまうくらいなら言わない方がいいやって思っちゃう。

あの明るさの裏側で、悟も一人悲しんだりする事があるんだろうか。

そう思うと申し訳ない気持ちとやり切れなさで、少し胸が痛んだ。