卒業式当日、曇天の空模様に俺の気持ちも曇ったまま、友達のまま迎えたこの日を、友達のまま終える覚悟を決めた。

俺の想いは思いもよらない形で伝わってしまったし、悠真の思いも痛いほどわかってしまったから、改めて告白して振られるつもりもないし、もうこんな風に関わることも無くなるんだろうから、潔くこの恋心と一緒に、悠真とも今日でお別れだ。

滞りなく式も終わった放課後、卒業生は最後のお別れを惜しんだり、それこそ告白なのか男女が照れながら話したりしてるのをちらほら見かける。

モテる男子はもう既に制服のボタンがなかったりして、自分には無縁だと溜息をつき悠真を見れば、案の定ボタンなんか一つも残っていなかった。


「あーっ!悠ちゃんボタン残ってないじゃん!」

「ありとあらゆる所取られちゃったから寒みいんだけど」

「羨ましい限りですなぁ…ねぇ?凜ちゃん?」

「ん?あぁ、うん…このくっそ寒い日にご苦労さんなこった」

「うぅ、マジで寒みぃ…あっためてぇ~?」

「ほらおいで~♡俺があっためてあげるぅ~♡」

「うわっ!悟、重い…っ」


悠真の背中に飛び乗った悟をジロっと睨みつければ、挑発するように俺を煽ってくるから、諦めたように目を逸らし大きくため息を着く。

あんな風に、悟みたい絡むなんて俺にはできないしするつもりもないけれど、ボタンくらいは記念に欲しかったな…なんて思ったり思わなかったり。

未練タラタラだよな…


そしていつもの分かれ道。
悟と別れ、桜が満開に咲き誇るあの坂道を悠真と2人で歩く。

この坂をのぼり終えれば悠真ともお別れだ…

そしてこの気持ちも、今までの想い出と共にそっと胸の奥にしまっておこう。


「はぁ…とうとう卒業したな」

「そうだな…」

「卒業しても…会えるよな?」

「え…っ」


俺の気持ちを見透かしたように問いかける悠真は少し寂しそうで、胸がチクリと痛み気持ちが揺らぐ…

頼むからそんな顔で見ないでくれよ…っ。

坂を登り終え返事もまともに返せないまま、俺は悠真に別れを告げ背を向けて歩き出した。


「じゃあな…」

「凜…っ」


ここで振り返ったら俺の覚悟が鈍る。
だめ、絶対振り返らない!

そう思って足を止めることなく歩き続けた。